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やってしまった。
昨日、あのまま椅子で眠ってしまった。
しかも男性はもう起きている。
怪しまれたら、…どうしよう。
「あ、みるくちゃん、おはよう。」
「おはようございます、」
「椅子で眠ったの?」
「い、いえ!一回起きたけど、此処で二度寝しちゃったみたいで…」
この言い訳で大丈夫かな、と息を吐いて。
「私、今日行くところがあって、早めにホテル出たいなぁ、」
もちろん行くところなんて無かったけど、早く此処を出たかった。わかったよ、と言った男は身支度を始める。
荷物をまとめ終えた様子のそいつは、私にお金を渡してきた。三枚の一万円札を。
「ありがとうございます、」
と、笑って一緒に部屋を出る。
そして、丁度、人目に付くホテルの外に出た時だった。
その男が急に抱き締めてきて、また会えるかな、と言ってくるのだ。
気持ち悪いし、早く離して欲しかったから、はい、と適当に肯定したのだけど、離れる様子のないそいつは、本当に?じゃあメールアドレス教えてよ、好きだよ、とか。
本当に気持ち悪い。吐きそうだ。
適当に返事をしていた時だった。
「あれ、何をしているんだい?」
__太宰さんの声だった。
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時