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異能を使って男を疲れさせて、眠らせた。
本当に便利。
お金は先払いで貰っているし、置き紙さえすればいつでもホテルを出られる。けど、とりあえず冷蔵庫を開けて有料のお茶を手に取った。それを右手にベット脇の椅子に座り、さっきの紙を開く。
そこには見知ったような英数字の羅列があった。メールアドレスだ。
下にはこう書かれていた。
«この間から使っているメールアドレスは仕事用のものなのだけれど、もし良ければこちらに連絡をくれないかな»
要するに、プライベート用のものなのだろうか。だとしたら嬉しい、と私も、援助交際用のスマホでは無く、昔から持っているけどあまり使っていないガラケーの方からメールをしよう。
実質二人だけど、自分一人であるかのように静かなその空間に、ボタンをカチカチと打つ音が響いた。
まだ一件しか名前のない電話帳を見て、この携帯が彼専用のものになったみたい、なんて考えて。
火照りそうな顔を誤魔化す為にお茶を流し込んだ。落ち着くために、ふぅ、と息をつく。
私も眠ろうかな、と目覚ましを五時にセットしてソファーに横になる。三日くらいはこの稼ぎでどうにかなるかな。
…会いたいなぁ、太宰さん。
心の底から思いながら瞼を閉じ、とろんと眠りに落ちた。
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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時