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腕も足も、今日は縛られてしまった。視界こそ開けているが、これもいつ奪われるかわからない。さっきからずっと、長い接吻を落とされている。何度も酸素が足りなくなる、これ以上は、と言うところで必ず息継ぎをさせてくれる。わかっているかのように丁度いい時間だった。

やがて、片手が胸に滑ってきた。ゆったりとした愛撫にとろけてしまう。
どうやら優しくしてくれるというのは本当みたいだ。でも、この拘束はなんだろう、と矛盾に気がついてしまう自分がいやだ。

弱い刺激ばかりだが、気持ちよかった。私は車の中あの刺激で達してはいない。必死に堪えたからだ。それに関して彼は、凄いね、と意外そうに褒めてくれた。

焦らされている、そう感じるほど緩やかな快感は物足りなかった。きっと言わせようとしている、きっとねだらそうとしている、なんとなく思った。このままいけば私は、恥ずかしいセリフを声に放ってしまう。

「物足りない?」

まさかここで仕掛けてくるとは思わなかった。きっと、という予測でしかなかったそれは確信に変わる。

「…は、い」

肯定してしまうことが酷く恥ずかしく、顔を隠してしまいたかったがそれは叶わない。手元の拘束を恨めしく思いながらせめて、と視線を下に向けた。

「可愛くお願いしてくれたら、昨日のやつ全部使ってあげる。途中で根をあげても今日は止めないから、考えて。」

私は熟考した。とはいえ一分にも満たない短い時間。多分私は途中でやめて、と嘆願(たんがん)する。結論はやけに鮮明だ。

…どうせなら、どうせならこの人に、めちゃくちゃにして欲しい。

何かよくわからない、欲のようなものがこみ上げる。


縋るような声だった。






_お願いします、昨日の、使ってください。

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作者名:こめこ | 作成日時:2018年4月28日 22時

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