どこにでもある日常の風景 〜上杉編〜

１０ ページ18

*


　黒木の額を小突いていた。





「私をからかわないで」



「はい、姫様。
　申し訳ありません」





　…………。

　ああ、そうかよ。

　いや、そうだよな。

　結局最後まで振り回されてたのは俺一人だったってわけだ。

　再度踵を返して歩き出す。

　結局、なんだったんだ。黒木に振り回されただけか。

　あー、アホらし。

　盛大な溜息を吐いたところで、ふいに肩を叩かれた。





「…なんだよ」





　美門のうっとうしい手を、肩を回して払いのける。

　それでも離れることなく、美門は小声で話しかけてきた。





「アーヤの本心はどうだと思う？」





　……。

　何も答えなかったら、よけいに絡まれそうだな。





「わかるわけねーだろ」





　とりあえず。

　こいつや他の奴らの前でこれ以上話すことじゃねーってことは確かだ。





「俺がリーダーのままでいることに賛成してくれたら、次の調査もアーヤと組ませてあげるよ」



「おまえ、リーダーでいたかったのか？」



「いや。
　若武の不満そうな顔が見たいだけ」





　ああ、それなら同意。

　けど、別にそんな裏工作望まねーよ。





「時間、いいのかよ？」



「そうだった。
　じゃ、この話の続きはまた」



「ねーよ」





　美門の方向に蹴る振りをして、俺は肩を落とした。

　疲れた。スッゲーだるい。

　なんだったんだ、いったい。

　美門も黒木もいい加減にしろ。

　いや、もとはといえば若武だ。金輪際あいつのもってくる事件には関わりたくねー。

　……。

　わかってる、心の奥で。

　俺は、期待してたんだ。少しは、立花が動揺してくれることを。





*

１１→←９

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す