どこにでもある日常の風景 〜上杉編〜

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　俺、どんだけ惚れ直させられるんだよ？

　目映いほどの輝き。真っ直ぐな心根。絶対の信頼。

　落ち込んだ百倍の速さで浮上していく現金な自分の心を、俺はその場で必死に戒める。

　もし今ここで俺が立花に気があるってバレたら、庇ってもらった立花の顔に泥を塗っちまう。それだけはやったらダメだ。

　だけど、無意識に顔が緩みそうになるのはどうしようもない。

　立花が否定したのは『俺が好きじゃないと思っているから』で、怒ったのは『俺が不真面目だと思われること』なんだよな。そんなの聞いたら、ニヤけるだろ。

　必死に表情筋を硬直させている俺の耳に届く声で、黒木がいつになく鋭い追及を立花に仕掛けた。





「上杉のことは言わないよ。
　俺はどちらかといえば、アーヤのことが聞きたいだけだから」



「私…？」



「上杉のこと、全く気になってないって言い切れる？
　男として意識したことない？」



「！」





　無言になった立花の気配を感じて、息を呑む。

　おい、黒木、何言いだすんだ。

　そう殴りかかりたい衝動は、立花の反応より優先されるものじゃない。

　即答で否定しなかった。それはわかる。

　…マジ、か？ これ、現実だよな。

　振り向くかどうか迷う。俺が動揺してることを他の奴にバレるわけにはいかない。

　なんて建前はどうでもいいだろ。

　数秒の迷いを捨て、俺は背後へと振り返る。

　もし立花が動揺していれば、脈がある。

　少しでも何かが違っていれば…。

　振り向いたその視線の先にあったものは。





「…黒木くん」





　立花が。






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