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第六章 出会う度に欠片となる ページ20

週末。

いつもは午後からの部活も、顧問の午後出張のため今日は午前で終わった。

最低限の勉強も終わったし、家でゴロゴロしようと思ってたのに、お父さんがいる。

ありがたいことに、特等席であるソファも盗られている。


窓から入ってくる風は暑いのに、お父さんは冷房を入れたがらない。

こんなところに居られるか。

私は冷蔵庫に入っていたミニパックの牛乳を一瞬で飲み干し、歯を磨いて家を出た。



さて、どこに行こうか。

着替えて出てきたは良いものの、行き先が決まっていなかった。

……あ、そう言えば欲しい本があるんだった。

近くに単店舗の本屋はないけど、少し先にショッピングモールがある。

でも沢山人いるし、うるさいし、広い。

けど涼しくて本屋があるのはモール……。

結果、私はショッピングモールに行くことにした。


土日なのに珍しく誰もいないバス停で待っていると、見覚えのある子が隣に並んだ。

横目で見ると影山くんだった。


「うっス」


影山くんは私がいるのを知っていたかのように挨拶をした。

肩からはいつものエナメルが掛けられていて、髪の毛が湿っている。


「部活終わり?」


私から話しかけることなんて滅多にないけど、彼には話しかけたくなった。


「はい」

「どこか行くの?」

「あっちのモールに行きます」


影山くんは今から私が向かう方向を指した。

“あっちのモール”って言ってもここらでは、そこしかない。


「私もそこに行くつもり」

「まじっスか」


私が行き先を伝えた時、どこか彼の声が嬉しそうだったのは気のせいだろうか。

定時で着いたバスに乗り、揺れること約15分。

一気に人が増え、自分の街と比べることすらできない。

バスの定期はないため、小銭を入れると「ありがとうございました」と運転手が言った。



流れで一緒に行くことになり、

隣を歩く影山くんの顔は、表情筋が柔らかくなっていて、口がもごもごと動いている。

おもちゃを目にした子供みたいで、可愛らしい。


店内に入ると冷風と共に、沢山の人の熱気で溢れていた。


「離れるといけないんで」


寒気と暖気の境目で、影山くんは私の手をとった。

▽→←▽



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ハルジオン(プロフ) - 太宰亜里沙さん» コメントありがとうごさいます。楽しんでいただけてなによりです! (2020年7月14日 17時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - コメント失礼します!凄く面白くて一気読みしちゃいました!静かな夏の描写や素敵な影山をみれてとても読んでいて楽しかったです! (2020年7月14日 12時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
ハルジオン(プロフ) - はるはるさん» コメントありがとうございます。夏の描写はかなり気を使っていたので、そのように言っていただけて光栄です! (2020年7月11日 13時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - 影山くんと主人公の不思議な関係、対して、鮮明な夏の描写。素敵な文章に幾度も胸をきゅっと締め付けられるようでした。最後の文章で、一気に世界が色づくような錯覚を覚え、思わず泣きたくなるような気持ちになりました…! (2020年7月11日 2時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハルジオン | 作成日時:2020年6月21日 13時

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