2人で。(影山茂夫) ページ3
｢Aさん。どうしたらモテると思いますか？｣
唐突に、突拍子もないことを隣で本を読んでいたAさんに投げかけてみた。
｢…モテ……？うーん………｣
本から顔を上げ、一瞬言葉の意味が分からなかったのか困惑したような表情をしたが、口の中で噛み砕かれた言葉に意図を察したらしいAさんは腕を組み、考えているようだった。
エクボと師匠がいたら今頃茶化されていただろう。師匠たちはなんだかディープな依頼？をされたらしく、守衛さんに憑依したエクボと依頼主のところへ言ってるらしい。Aさんは僕の為に、残ってくれた。嬉しい。
Aさんはきっとモテる。背も高くて、顔もかっこいい。それに優しくて、可愛い笑みを浮かべる人だ。Aさんといると落ち着くし、もっと話したい。そんな事からさっきの問いは口から出た。
じっ、とAさんを見つめていれば、ぱっと顔を上げた。
｢やっぱり手近な所から始めたらいいんじゃないかなあ、勉強とか。まあでも、茂夫くんはそのままでも素敵だけれどね｣
ふにゃり、と笑って、勉強もわからない所があったら遠慮なく聞いてねと言ってくれた。
僕に微笑みかけてくれたAさんが、どうしようもなく愛おしく感じて、Aさんの胸元にぽふりと顔を沈めた。
｢んん、今日は甘えたさんなのかな？｣
あまり柔らかくない胸元に顔を押し付けて、肺に空気を入れれば、香水とは違う、Aさんの匂い。ほのかにする汗の匂いが欲を掻き立てる。
｢Aさん｣
……好きです、なんて言えるわけがなくて。その言葉を飲み込んで、目を閉じる。Aさんが頭を撫でてくれる。優しい手つきで。
｢僕、今とても、幸せです｣
Aさんを独り占めできて。さっき飲み込んだ言葉を言うのはもう少し後になりそうだけれど、まあいいかと思いながら、師匠たちの除霊が長引けばいいのにと願った。
続く (更新停止中)
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作者名：まめた | 作成日時：2017年4月18日 2時
