松野家の隣人ちゃん2 (ページ36)

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*チョロ松

あっついベンチの右端でアイスの実を食べる｡

べつにAに一番遠いとこってことに不満抱いてるわけじゃねぇし｡そんな子供じゃないから僕は｡

おい一松こっそり笑ってんじゃねぇぞ｡

『ちょーろちゃん』

「何だよブス」

『唐突な罵倒』

死んだ顔でアイス食ってればAが『チョロちゃんアイスの実にしたんだ』と物欲しそうな目をしながら僕の前に立つ｡

「……なに､欲しいの」

『うん､りんご欲しい』

「やるなんて一言も言ってないけど」

『MOWの苺あげるよ』

「…」

『どしたのチョロちゃん､今日つんつんしてんね』

「べつに」

僕の前に屈んで首をかしげるA｡パンツ見えてんだよ馬鹿｡

「ん"ん"っ､ハニー､こっちにおいで」

『？うん』

気付いたカラ松が咳払いをひとつして､自分の太股をとんとんと叩く｡何も分かってない彼女は素直に頷いてコイツの太股の上に腰かけた｡

『31でも行こうかと思ってたけどコンビニもいいね』

「そうだな」

『クーポン期限まだ大丈夫だし､またみんなで行こうね』

その"また"に僕は含まれてるのかな｡

にこにこしながら足を揺らす彼女｡カラ松もいい気になりやがって｡お似合いだって色んなとこで噂されてんの､知ってるんだからな｡

アイスの実をひとつ食べようとすると左隣から細い指がのびてきた｡

『チョロ松どうしたの､今日ほんと元気ない』

てっきりアイスをつまむと思っていた指は僕の頭へ行き､わしゃわしゃと雑に撫で回した｡

想像していなかった事態に色々追いつけず､べちゃっと薄黄色の実がズボンに落ちる｡火照った肌と逆上せた頭をじんわりとした冷たさが正していく｡

「はい！？べっ､べつに何でもないから！！」

『あは､よかった､いつものちょろちゃん｡勉強のしすぎで疲れてたのかもね』

けらけら笑って､Aは僕が落とした林檎味のアイスの実をつまんで口に運ぶ｡

『ちゃんと休まなきゃ倒れちゃうよ』

「……………ありがとう」

『ツンデレか』

「…」

ぺしっ､と肩を叩かれる｡

あーもうほんと､容姿のいいコイツが憎い｡なんでこんなにかわいいんだ｡

『カラさんクーリッシュ好きだね』

「あぁ､ハニー食べるか？」

『遠慮なく』

カラ松の食べかけのクーリッシュに何食わぬ顔で口をつけるAと微笑ましそうに見詰めるカラ松｡ぱっと見､カップルのそれである｡

こういうとこなんだろうなぁ､ほんと｡

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