松野家の隣人ちゃん2 (ページ32)

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翌日､松野家にて｡

「妹が欲しいな～」とトド松に言われて
私は大人しくトド松の隣に腰掛ける｡

1番下だからやっぱし下が欲しいのか｡

『へーい､トド松おにーちゃん』

「僕ずっとかわいい妹が欲しかったんだよね」

テーブルに頬杖をつきながら彼は
スマホ片手にでっかい溜め息を吐く｡

『よかったじゃん妹できて』

「かわいい､妹ね｡かわいい」

『えっ私かわいくない？』

「自分で言う辺りかわいくない」

『ごめんて』

べしべしっとトド松の肩を叩いて
テーブルの上のクッキーに手を伸ばす｡

ブルボンのチョコチップクッキーを
さくさく食べているとトドちゃはスマホの
電源を切って私の髪をいじりだした｡

『ってかトドち…お兄ちゃんは自分で
　女装でもなんでもすればいいじゃん』

「女装したかわいい僕で満たされるのは
　僕じゃなくて兄さんたちでしょー」

『ふぅん』

適当な返事をしてポッキーに手を伸ばす｡

ぽきぽきぽきと食べている間に彼は
私の髪を三つ編みにしてポケットから
ゴムと取り出して器用に結んだ｡

「相変わらず癖毛だね～」

『ふわふわって言って』

「いやぼさぼさかな」

『お兄ちゃんばか』

「はいはい」

くすくすと笑ってトド松はクッキーを
ひとつ取って口に運ぶと「そうそう」と
立ち上がって棚から綺麗な箱を持ってきた｡

『なに？』

「妹できたらこれやりたかったんだ」

『……化粧品？』

箱のなかにはきらきらした化粧品がずらり｡
万年すっぴんな私には無縁のもの｡

それらを持った彼がぐいぐい迫ってくる｡

「ナチュラルにするから…ねっ？」

『男に化粧されるとか無理待って』

「ちょっとだけちょっとだけ」

と言われて1時間が経った｡

「はい完成」

『顔の筋肉が疲れた…』

「鏡見てみて」

『ありがと』

受け取ったカラさんの鏡を恐る恐る見ると
いい意味でほぼ別人に近い私の姿があった｡

「かわいくなったでしょ」

『自分のかわいさが憎い…』

「いやまぁ元も悪くないけどさ」

『えっ』

「はいAちゃん」

トド松は呆れた目で私を見ると
突然ぐいっと私の肩を抱いた｡
向けられるスマホの画面｡

「はい撮るよー…ってどうしたの」

『や､大丈夫だいじょぶ』

すぐ隣にトド松の顔､からだ｡

いっつも弱々しいフリしてるくせして
抱き寄せた力は想像以上に男の子だった｡

突然のギャップに胸の奥がきゅっとなり
身体中にどくんと激しい鼓動が響く｡

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