松野家の隣人ちゃん2 (ページ4)

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白い天井に清潔感のある白いベッド｡
仄かに薫る知らない薬品の香り｡

保健室なう｡

『イッチ』

「…なに」

『もう帰りたい…』

「だよね」

始業式名物､張り切った校長先生の
ながーいお話を聞いて始業式は終わった｡
そこまではよかった｡まあ耐えられた｡

でも業務連絡で生徒指導部の先生がした
自転車マナーについてのながーいお話は
駄目だった｡立ちっぱは無理だった｡

「アンタ頭大丈夫?」

『どういう意味かな???』

「倒れたときすごい音したし」

『マジですか』

若干痛む後頭部辺りをさわさわしてみると
一ヶ所めちゃめちゃ痛い部分に小指が触れる｡
反射的に身体が震えて目に涙が滲んだ｡

これあれだ…たんこぶってやつだ｡

『……ぅづっ！』

「あーぁ､たんこぶできてる」

『もうほんと辛い泣きたい…』

「可哀想にねぇ…ふひっ」

『いや今笑うとこじゃない』

軽めに､ぽかすかイッチを叩けば
もっと強くって目で見てきたから止めた｡

『いや～…ごめんね､付き合わせて』

「べつにいいよ」

『いまHRかな』

「そ」

『なんか戻り難いなぁ…』

「大丈夫でしょ」

よっこらせ､と年寄りみたいに椅子から
立ったイッチはベッドを囲むカーテンを
開けてどっかへ行ってしまった｡

『イッチ?』

「ちょっと待ってて」

『?うん』

言われた通りに待機していると
保冷剤を持ってきてくれたイッチが
戻ってきて､またベッドの隣の椅子に座る｡

「冷やしときなよ」

『わ､イッチ優しい』

「べつに普通でしょ」

『そんな照れるなって』

「…」

ぼさぼさの頭をかいて学ランのポケットを
がさごそと漁り保冷剤に続いて何かを
私の太股の上辺りに放り投げた｡

『メントスじゃん』

「やさしい､から」

『食べていいの?』

「ゴミからのでよければ」

『わー嬉しい！ありがとう！』

べりり､と包装を破ってひとつ口へ｡
イッチと同じ紫色｡グレープ味のメントス｡

『ふまい…』

「よかったですねぇ」

『お裾分けね』

「え…あ､ありがと」

いやもともとイッチのなんだけど｡

ぽとっと彼の白い掌にふたつ落とす｡
マスクを取って口に放るイッチを
見詰めてると､見ないでと怒られた｡

『そろそろ教室戻ろっか』

「…いやだ」

『えっ』

ベッドから降りようとするも
イッチにきゅっと手首を掴まれた｡

熱を帯びた視線が私に刺さる｡

「もうちょっとだけ」

『さぼりはよくないよ』

「いいから」

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