松野家の隣人ちゃん2 (ページ19)

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注意

*トド松

「ちょっとみんな」

「どうしたんだブラザー」

「これ見て」

「…」

部屋に入ると兄さんたちが僕の方を見た｡

スマホの画面をとんとんっと叩いて
テーブルの上に置くとわらわらと集まる｡

「……これ､Aちゃんだよね」

暗めの画面に表示された写真には
あつしくんとAちゃんらしき人｡

友達とのLINEでまわってきたものだから
絶対とは言い切れないけどたぶんそうだ｡

「…なにこれ､トド松の知り合い?」

チョロ松兄さんが眉間に皺を寄せながら
何故か声をひそめて低い声で言う｡

「相手はあつしくんっていう頭よくて
　家も金持ち､おまけに顔も性格もい」

「もういい聞きたくない」

すごすごと後ろに下がるチョロ松兄さん｡

沈黙が何だか怖くて､ぱっと顔を上げると
カラ松兄さんと十四松兄さんの顔から
表情が消えていた｡こんなの初めてだ｡

「カラ松兄さん…?」

「…ひとりにしてくれ」

恐る恐る声をかけるといつも持ってく
グラサンも忘れて出ていってしまった｡

下でガンッ！と壁を殴った音が聞こえた｡

「じ…十四松兄さん……?」

「素振りしてくる」

「え､」

「え?」

「ううん…行ってらっしゃい」

壁に立て掛けられた金属バットを持って
立ち上がった兄さんを呼び止めると
ぎょろり､焦点を合わせた目が僕を見た｡

駄目だ……止めたらやられる｡

「ぁ……あ､ぁあ」

「一松兄さん?大丈夫?」

まるで世界が終わってしまうかのように
がたがた震えて口から不明瞭な声を漏らす｡

「…すてられたんだ､ぼく……ぁ」

「ちょ､一松兄さんッ！！！」

「っ」

肩を掴んで大きく揺さぶると
はっとしたように元に戻った｡

見開かれた目には涙が滲んでる｡

「大丈夫?水飲む?」

「……いい､猫んとこ行ってくる」

「うん…」

覚束ない足取りで部屋を後にする兄さん｡

これで部屋にはおそ松兄さんと
チョロ松兄さんと僕だけになった｡

「お…おそ松にい､さん?」

いつもはこういう話題なら誰より
はやく文句いうか何か言うかする
兄さんが今日はまだ何も言ってない｡

「あの…だ､だいじょ」

「えぇ～！Aリア充なのぉ?」

俺だってまだ童貞なのにぃ?と
他とは違ってにやにや笑う｡

「トド松残念だったねーお疲れさんでした！」

「いやまだ何にも言ってないし」

「坊主する?剃るよ?」

「このままでいいから」

あぁ､

このひとが一番こわい｡

.