松野家の隣人ちゃん2 (ページ12)

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*チョロ松

Aに話し掛けると一松の方を
向いてた顔がようやく僕の方を見た｡
相変わらず整った顔しやがって｡

『なに?チョロちゃん』

「今日帰り付き合ってよ」

『どこに?』

「図書館」

『あぁお勉強?いいよ』

そろそろ考査が近いということで
悔しくも僕より頭のいい彼女に
勉強を教えてもらうことにした｡

正直言うと6つ子のなかで1番
彼女と距離あるのは僕だと思う｡

でも僕だってAが好きだ｡
この気持ちは兄弟にも劣らない｡

「…A」

『なにー?イッチっち』

「今日帰り付き合ってよ」

『いや今の話聞いてたよね』

「生まれたての猫会えるよ」

『うぐっ』

でもまぁ､他の兄弟もコイツが好きで｡

あの手この手を使ってどうにか
彼女を振り向かせようとする｡

『えぇ…猫ちゃん会いたい……』

「白くてかわいいよ」

『でもお勉強会するからなぁ…』

自称ゴミクズなコイツだってほら
必死にAの気をひこうとしてる｡
ってか先に約束したの僕だから！！！

「じゃあイッチもお勉強して帰りに
　みんなで猫ちゃん見てこっか」

「ん､いいよ」

「はぁ！？」

『え､なにチョロちゃん嫌なの?』

「あ～…いや､べつに」

「なら決定で」

あぁ…せっかくのチャンスが……｡

いや分かるよA優しいし｡
平等に接しようと平和に終わろうと
気遣ってくれてるのは分かってるから｡

『チョロちゃん疲れたの?』

「え､いや､べつに！？」

『ほーら学校あとちょっとだよー』

「あぁ…うん､そうだね」

ぐいぐい彼女に手を引かれて校門通過｡
雑誌出してくるから先行っててね､と
彼女は職員室の方へ走ってってしまった｡

「あ…」

「…」

「…」

いやコイツとふたりきりかよ！！！

ふたりきりがいいとは思ったけど
コイツとなんて思っとらんわ！！！

「……すいませんねぇクズで」

「ほんとだよ」

「でも僕だってAがすきだから」

マスクをさげて､ふひっとほくそ笑み
哀れむような視線を軽く僕にむけた｡

こんなのに彼女を渡してなるものか｡

なんて､僕が思っていいことじゃないけど｡

「でもどーせ」

「…」

「Aは僕たちを見てなんかないよ」

「やめろよ」

「幼馴染みで仲良くても結局それ以上には…」

「やめろっつってんだろ」

少し声を強くすれば､一松はふひっと笑い
マスクを上げて少しペースを下げて歩いた｡

「…そんなこと」

言われなくても分かってるんだよ｡

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