【◇】Ace of Diamond

神谷カルロス俊樹 ページ20

*


『俊樹ぃ…』

「もう喋んな寝てろ」

『味噌汁飲みたいぃ…』

「年寄りかお前は」



ただいまベッドのなか｡絶賛風邪引き中｡
昔から仲良かった俊樹がお見舞いに来た｡
最近の子はお見舞いなんて来ないのに｡



『ほんとよく来たよね』


「見舞い行こうかってお前の母さんに
　連絡したら丁度出掛けるから助かる
　お守りよろしくねって返信した」


『マミー…』

「だから取り敢えず寝とけ」



布団をぽんぽんされて目を綴じる｡
正直もうたくさん寝たから眠くない｡
冷えぴたがぬるいから変えたいです｡



『としきーとしきー』

「はいよ」

『お味噌汁作っていい?』

「寝てろって」

『じゃあ俊樹作ってきてよ』

「いや俺家庭科2だし」

『インスタントでいいからぁ…』



こんな味噌汁味噌汁うるさい女は嫌か｡
とは思うけどお味噌汁が飲みたいのです｡

布団のなかでばたばたすれば溜め息吐いて
部屋から出ていく俊樹｡優しいもうすき｡
脱ぎ癖無ければ最高なのになぁ…｡



『折角会えたのになぁ…』



高校違って､久々の再開が風邪とか
なんかちょっと切なくないですか｡
もっと元気な姿で会いたかった｡


天井をじっと見詰めてるとドアの開閉音｡



「A」

『俊樹…』

「味噌汁飲める?」

『飲むー！』



がばっと起き上がると頭が痛んだ｡
ばーか､と私の頭を撫でた俊樹は
湯気のたつお椀を私に渡してくれる｡



『やった』

「インスタントだけどな」

『いただきまーす』



温かいお味噌汁をゆっくり飲むと
俊樹が私の枕元に来て座った｡



『おいしい！』

「よかったな」

『ご馳走さま！』

「もっと味わえよなお前」

『美味しいものは儚いね』

「まぁいいけど」



さっき痛い目みたので今度はゆっくり
身体を倒してお布団のなかに入った｡
目を綴じれば俊樹の香水の匂いが薫る｡



『俊樹野球がんばってね』

「お前も部活がんばれよ」

『頑張ってるもん』

「知ってる」



大きな手が私の頭をよしよしして
べりりっと冷えぴたを剥がした｡



「大分ぬるくなってんじゃん」

『ぬるいと嫌だよねこれ』

「新しいのはい」

『わーつめたーい』



急な冷たさに頭の奥が鈍く痛むが
その痛みもすぐ冷たさに消えた｡
ふぅ…と一息吐いて汗を拭う｡



「ガッコ違っても応援しろよ」

『御幸くんすっごい素敵…』

「おいこらAちゃん」

『嘘うそ､私は俊樹推しですから』


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