【◇】Ace of Diamond

白河勝之 ページ19

*


「おい」

『勝之､むり､こわい死ぬ』

「やりたいっつったのはそっちだろ」



わりとたくさん雪が降った｡

だから幼馴染みの勝之に雪合戦しよって
歳に似合わずメール送ったんだけど
よく考えてみればこの人野球部員じゃん｡

勝之だし豪速球投げてくるじゃん｡



『こわいこわいこわい』

「まずへっぴり腰やめろ」

『だってこわいもん』

「まだ投げないから」



手に持っていた雪玉を捨てて
はあぁ…とふかーい溜め息を吐く｡

近所の公園に高校生ふたり｡なんて
端から見れば変な光景なんだろうな｡
昔は一緒にキャッチボールしたのにね｡



「怖いなら誘うなよ」

『だって遊びたかったんだもん』

「子供か」

『子供ですー』

「頭がな」

『失礼だよ!!?』



吐息が視界を白く染める｡

折角来てくれたんだし雪合戦しよう｡
顔に当てたらココアでも奢らせようか｡



『勝之！』

「はいはい」

『顔当てたらココアね！』

「ココア買えば顔面…」

『そういうのいけないんだよ！』



そうやってわーわー騒いでる間に
彼の第一級が私の肩めがけて飛んできた｡
やばいやばいと避けた所にまた一球｡



「A投げないの?」

『うわぁ腹立つ』



投げた球もまぁ当たる訳なく
5分後にはもうびしょびしょ｡




「馬鹿なの?」

『馬鹿です…っくしゅ』

「他の奴誘えばいいのに」

『勝之と遊びたかったもん』

「野球部なめてんのアンタ」

『昔はよくしたじゃん』

「昔はな」



持ってきてたタオルで髪を拭いてると
勝之はふらりと何処かへ消えてしまった｡



『学校違うし疎遠になるのは嫌だもん』



ベンチに腰掛けてタオルを鞄にしまい
櫛で乱れた長い髪を手早くなおすと
頬に何やらめちゃくちゃ熱いものが｡



『あっつ！！！』

「いらないならいい」

『えっあっ勝之…』



ブラックコーヒーに口付ける彼は
私に温かい(熱い)ココアを差し出す｡
ありがたく受け取るとフンと鼻を鳴らした｡



『ありがと勝之､いくら?』

「いいよ奢るから」

『やったぜ』



プルタグを引いて温かいココアを飲む｡
ちらり隣を見れば勝之が私を睨んでた｡
え､なになに怒ってるの?おこなの?



「べつに」

『ん?』

「疎遠にはならないでしょ」

『聞いてたの?』

「お前声でかいし」

『まじですか』



いま穴があったら入りたい｡



「それに離れる気もないから」


『え?』

「…ココア飲んでろブス」

『ちょっとブスはないでしょ！』

「はぁ…」


.

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