【◇】Ace of Diamond

成宮鳴 ページ17

*


暖かい布団のなか､ふと目を覚ます｡
目を綴じたまま手を動かすと隣に
何かあることに気付き手を引っ込めた｡

なんだこれ…と考える｡



『…鳴くんか』



そう言えば昨日一緒に布団入ったっけ｡

鳴の親戚の私はたまたま仕事があって
稲実高校の近くに来たはいいのだが
泊まる場所が無かったので､彼のいる
寮で一晩お世話になることになった｡

みんな優しいし本当助かった｡



「ん…んん」



鳴がもぞもぞと動いて寝返りをうつ｡
無駄に整った顔が私の方を向いた｡



『鳴くんおはよ』

「まだ寝たい…」

『起きなきゃだめだよ』

「Aさん代わりに行って」



相変わらず駄々をこねる鳴くんは
今日も早くから朝練があるようで
原田くんに起こすよう頼まれた｡
人がいると起きなくなるらしい｡

まぁ甘えたさんだもん仕方ないよね｡



『起きないとくすぐっちゃうよ〜』

「またそうやって子供扱いする…」

『そりゃ私もお姉さんだもん』

「もうお姉さんは充分ですー」



ん"っんー！と大きく伸びをした彼は
勢い任せに起き上がると欠伸をひとつ｡
小さい頃から変わんないんだから｡



『私も行こうかな』

「いやAさん疲れてるでしょ」

『大丈夫だよ?今日は暇だし』

「だーめ､おねんねしてなさい！」

『ふふ…何それ』

「いいから！」



私の肩をぐいぐい押してベッドに寝かせ
布団を肩まで掛けてとんとんしてくれる｡
鳴くんって本当優しいよねぇ…うん｡



『鳴くんのかっこいいとこ見たいな〜』

「いつでも見れるじゃん」

『TVでね?生で見たいの』

「外凍えるくらい寒いけど」

『鳴くん温かいの奢ってくれるんでしょ?』

「そんなこと言ってないけど!!?」

『鳴くんつめた〜､いっ！』



鳴くんが力を緩めた瞬間に起き上がり
鍛えられた腰に勢い任せに抱き着いた｡
バランスを崩しふたりで倒れる｡



『あははごめんね鳴くん』

「まったくも〜…本当にAさんは」

『だって楽しいんだもん』

「自販機のコーンスープでいいよね」

『やった』



ならさっさと行くよ､と彼は私の手を
優しーく掴み二段ベッドから降りる｡
お互い別々に着替えて部屋を出た｡



「あのさ､Aさん」

『なに?』

「いつも…ありがとね」



照れ臭そうに少し唇を尖らせて
赤く染めた頬を掻きながら言う｡

そんな彼の背中をばんっ！と叩いた｡



「いったっ！！！」

『かわいいね鳴くん』

「かわいくないから！」



こちらこそありがとね､なんて｡


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