【◇】Ace of Diamond

沢村栄純 ページ1

*


駅でひとり白い息を吐きながら
やってくる電車から彼を探す私｡

彼の顔を見た瞬間あっと声が漏れた｡



『栄純お疲れさま！』

「おぉ！A！」



見事センバツへの切符を握った青道｡
栄純もみなさんも本当に素敵だった｡
思わず栄徳さんと肩組んじゃったし｡



『そしておめでと！』

「さんきゅ！」



笑いながらぱちんっ！とハイタッチ｡
相変わらず犬みたいな雰囲気してる｡



「長野久々だな〜」

『ほんとにね､若菜待ってるよ』

「それじゃ早くしねーとな」



死ぬほど人の多い駅の改札口｡
小さい頃みたくはぐれないように
手を繋いで人の波を掻き分けてく｡


かっこいいでしょ私の幼馴染み｡



『あ〜､人多かった』

「ほんと迎えありがとな」

『いいよいいよ』



駅から出て一息吐いて､歩き出す｡

人に揉まれ､熱気で赤くなった顔｡
それだけじゃないと思うけどね｡



「はやく行こうぜ」

『うん』

「若菜待ってんだろ」

『うん』



ほら､若菜だって｡

仲がよくても私と彼は所詮幼馴染み｡
それ以上それ以下でもないのが残念｡


私はこんなにも彼が好きなのにね｡



『…』

「そこで春っちが…」



彼のするチームメイトの話も右から左｡
相槌を打つだけで内容は入ってきてない｡
別のことが私の脳内を占拠してるから｡


これから栄純､若菜に告白するんでしょ｡


お似合いだって､私だってそう思う｡
心から喜べるかは別としてだけど｡



「どうした?」

『あぁ､ごめん』

「何か急に元気なくなったけど」

『そんなことないよ』



よく見てんな栄純｡

ほんとに?と訊く彼の背中を叩き
ついでに私の心も強めに叩いた｡



『栄純､告白しないの?』

「え?」

『折角なんだしさ』

「したほうがいいのか?」

『いま運まわってきてるって』



がんばって､と作り上げた笑顔｡
いや…多分ぐしゃぐしゃだろうな｡

だって今すごい胸が痛いもん｡



「好きです」



『私に言ってどうすんの､練習?』

「いや､本気でAのことが」

『ちょ…っと待ってタイム』



えっとえっと｡

どうしよう信じらんない｡


ぼろぼろと零れてきた涙に焦る｡
そんな私を見てもっと焦る栄純｡



「えっ！何故に泣いて…」

『私も好きだわばか！！！』

「怒ってる…?り､緑茶飲みますか」

『爽健美茶がいいもん…』

「分かった､そこ自販機あるから」

『栄純の奢り…』

「奢るから泣き止めよ｡ほら」



きゅっ､と


今度は恋人として手が繋がれた｡


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