Wolf Ⅱ (ページ42)

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＊No side＊

薄暗い寝室に大きく空いたドアから、電気の光が広く差し込んだ。
そして人影もその光とともに部屋全体へと伸びた。

ｷﾞｼｯ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

そんな部屋に軋み音が鳴ったのは、北人がAをベッドに寝かせたからだった。

北人はAの体が痛がるような体制になっていないか確認すると、
彼女の足元にあった布団を優しく体にかけてあげた。

『A...』

北人の声が漏れる。
そしてそのまま彼女の頭へ手を伸ばし、まるで壊れ物を扱うかのように優しく撫でた。

その顔には妖しくない、自然な笑みが浮かび上がっていた...。

北人はAの髪の感覚を感じながら、内に秘めたる想いを頭にずっとめぐらせていた。

北人はずっと悩んでた。

Aの存在に...。

彼にはずっと壱馬だけで
必要としてくれるのも、そしてそばにいてくれて話を聞いてくれたのも全部全部

でも彼女のせいで壱馬はいなくなった
死んだか分からないが、確実に確認できていない時点で可能性としてはこの世には居ないことも有り得る

憎かった、その存在が嫌だった。
壱馬と彼女を守るって約束したけど、本音、そんな気になんてなれなかった...。

だけど...、壱馬の名前を呼ぶ彼女は...
壱馬を想って表情をくもらせるAは...

どこか自分に似てるって思った。
自分と同じだって思った。

北人にとっての生きる意味は壱馬だった、Aにとっても壱馬だった...。
2人とも生きる意味を見失ってた...。

・

“でも...そんな中、生きる意味を見いだせない中...、
Aは自分自身の生きる意味より先に、俺に生きる意味を与えてくれた。
俺が必要だって、言ってくれた...”

その瞬間、北人の生きる意味が頭に広がった。

“俺なんかのこと必要だって言ってくれた彼女を...”

壱馬がいない今、北人の心はAで埋め尽くされている...

“彼女のためになんでもする...”

『A...』

もう一度呟かれたその声は、誰にも届くことは無い

そしてそのまま北人は、何かを決心したかのように部屋をあとにした...

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