Wolf (ページ38)

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なんでここに北人さんがいるの。
なんで何も起きてないの。

じゃあ、彼はどこに行ったの。
私は下を俯き、追いつけない事実を頭に再び涙を落とした。

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『お願い、Aちゃん。』

何も発さない私に声をかけた北人さん。
何故かその声は優しく、そして震えていた。

私はゆっくりと北人さんの顔見るために顔を上げ、
目が合った時不安そうに揺れる瞳が視界に写った。

『話して...？』

「っ＿＿！」

一層震えた北人さんの声が耳を貫く。
私は目をそらすことが出来ず、そしてその声を無視することが出来ず、

固まった唇を少しずつ動かした。

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“実は...”
泣きながら切れ続ける声で喋る私。
そんな私を北人さんは相槌を打ちながら、なおも悩ましげに顔を歪め、私を見つめた。

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＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

話が終わると、急に険しくなる北人さんの顔。
それが視界はいると私の背中に冷たいものが流れた。

『それって...ほんとっ...？』

聞いたことも無いくらいか細い北人さんの声に、恐る恐る首を縦にふる

その瞬間、北人さんは私の腕を思いっきり引っ張り立ち上がらせた。

「ほくとっ、さん！！」

そのまま私を連れ、リビング、廊下、そして玄関を通り抜けた北人さん。

ただついていく私の足は何も履いていない。
ジンジンと痛む足の裏と怖い表情をする北人さんの顔に声が震えた。

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『Aちゃん、確かに東倉庫だよね...』

「は...いっ」

少し道を駆け抜けると北人さんは足を止め、振り返り、私を見た。

『これ履いて』

そして北人さんは自分の靴を脱ぐと、裸足の私に履かせた。

私の足のサイズとは程遠くぶかぶかな靴。

それが私の靴を包んだ瞬間、北人さんはまた私の手を引いて走り出した。
サイズの合わない靴が音を立て、とても歩きづらい。
でも裸足の北人さんは痛みでもっと歩きづらそうだった。

しばらく走ると北人さんの白い靴下に血が滲んでいるのが分かった。

でも走り続ける私たち。
その様子に、私は走りづらい中走るのを辞めなかった。

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