Wolf (ページ37)

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理解した現実ページ37

＊

最近、時が過ぎるのを忘れることが多い。

彼のことになると何も考えられなくなる。

今回も例に外さず、気づいて顔を上げた時には明るかった空がオレンジがかっていた。

何時間泣いたのだろう、
何時間彼を思ったのだろう。
何も、何も分からなかった。

・

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ガチャ

玄関が空いた音にも反応できなかった。

閉まったリビングのドアの先から、こちらへ向かってくる足音。
私は顔を上げなかった。
ドアを自分から開けなかった。

だって薄々分かってたから

『えっ、Aちゃん！？』

彼じゃないってこと。

『壱馬は！？』

リビングに入るなり私をみつけ、大きな声を出しながら歩み寄ってきた北人さん。

泣きじゃくり、重くなった顔を上げる。

目の前には“傷一つない”北人さんの顔。

「...」

声を出す気力は残ってなかった。
疑問と不安は全て涙で溢れた。

・

『ちょっ、何があったの！？』

「あの人が...」

“北人さんを...”
自分で言おうとした言葉に、頭が正気に戻った。
その途端無意識に目の前の北人さんの肩を掴んだ。

・

「なんで！？なんで...！！！」

先程まで気力もなかったのに、急に出た大きな声
突然な勢いに北人さんの瞳から大きく見開いた。

北人さんは驚きのあまり声を発せていない。
なんで、と呟く声はどんどん小さくなり、そしていつしか聞こえなくなった。

・