Wolf (ページ39)

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「北人さんっ、ここは...」

『東倉庫だよ..』

大分走った頃、急に止まった北人さんの視界の先には大きく錆びれた扉。

静かな土地に2人の荒れた息が響いた。

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『Aちゃん』

「はい...？」

『俺は今日壱馬に電話をしてない』

「え...」

『誰かに捕まってもない』

・

“じゃあ、なんで”
そう発しようとした私より前に北人さんが口を開く。

・

『言いたくないけど、原因はAちゃんだよ。
多分、俺の携帯にアクセスしてそこから電話をかけたのはっ...』

言葉をつまらせそして悔しそうに唇をかんだ北人さん。

その瞬間、全てを理解した。

そして、這い上がってきた薄くなっていたはずのもの。

“私のせいで死ぬ”“彼の死”

・

『待って！！！』

それが頭をよぎった瞬間、北人さんの声も気にせず、一目散に扉へ走る。

扉の取っ手を掴むと錆びれて爛れた金属が手のひらに痛みを与えた。
でも私はそのまま扉に力を込めた。

・

ｷﾞｨっと大きく不気味な音を立て空いた扉。
人気はなく、とても静かなのが見て取れた。

“じゃあ彼は？”
そんな疑問が頭に浮かんだ。

・

そして、顔の横を湿った空気が通り抜け、鼻をついたある匂い

“その匂い”に私の動かそうとした足は止まる。

扉から入る光によって顕になった倉庫の中。
それは“より”私の体を動かなくさせた。

・