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貴「君、言葉は分かるかい?」

出来るだけ目線を合わせて問う。

少年はびくりと肩を大きく震わせて、此方を睨んだ。

少「ぼ、ぅをどうすぅき」

僕をどうする気、と云ったのだろうか。

ふむ、少々拙いが意思疏通できない事はない。

貴「初めまして、私は医者だ。Aだよ。今日から君の保護者になる」

努めて優しく、そう云った。

少「ほぉしゃ…」

貴「一緒に居るって事さ」

椅子に掛けていた白衣に腕を通す。

貴「取り敢えず君の名前を決めるべきだね……少年?」

目の前の少年の様子が可笑しくなった。目を見開き小刻みに震えている。

貴「どうしたんだい」

手を伸ばすと、ぱしん、と弾かれた。

少「ぁ…ぁ、ぁあ…いゃ、ぁ…ごめ、ごめんなさ…」

頭を抱え蹲る少年。

譫言のように御免なさい御免なさいと繰り返している。

何かがトラウマの引き金になったか。


貴「……白衣、か…?」

そう云えば森医師も白衣を着ていたな。

白衣を脱いで椅子に掛ける。

貴「少年、落ち着いて」

刺激しない様ゆっくりと近付く。

少「いゃ…ぃやだ…こぁいで…っ…」

頭を振って拒絶する姿は、幼児のようだ。

少「ごめ、なさぃ…いたぃ、こと、しぁいで……っかひゅ、」


不味いな、過呼吸になりかけている。

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作者名:あんこ入りのよもぎもち。 | 作成日時:2021年9月23日 11時

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