虎鶴の地 (ページ9)

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七の貢ページ9

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「……あの、虎珪様。放伐とはなんでしょう？すみません、折角噛み砕いて説明していただいたのに理解が追いつかないのです……」

「僕が言ったことは難しい話です。わからなくて当然ですし、これから理解していけばいいんですよ」

そう言って虎珪様は上品に微笑んだ。

「放伐、それは簡単に言えば武力で王位を奪うこと。その逆が禅譲であり、平和的に位を譲るのです」

璃の支配前の寛の君主を蓮王といった。彼は寛が望んだような人材であり、賢君であった。朽ち果て、閑散とした首都蕭安を立て直し、林業で国を盛り立てようとした。

そんな逸材な王ではあったが、彼もまた放伐によって位についた。

一つ前の王は極寒の地を変革するために重税を敷き法を歪めたがために、国民は他国へ流れた。まさに愚王であった。

「我らは決して忘れぬ。愚王が乱したこの国を。蓮王が即位した輝かしい日を」

「……宋至様、その蓮王が“生きている”としたらどうでしょう？」

周囲は張り詰めたような空気が漂った。璃王は見せしめのために、他国の王族は全て打ち首にした。その首は各国の城門に晒され、噂は一日にして国を巡ったのだ。

だが……蓮王は生きているかもしれないという。

「蓮王は賢い方です。噂の域にすぎませんが牽の遊牧民が何やら武器を集めていると。そしてその長が蓮王だとも」

「なんと……寛ひいては隣国のため王は二度もの放伐を……」

梨鶴は二人の話を寝床でじっと聞いていた。いや、聞いていることしかできなかったのだ。途方もない、まるで国取り合戦のような内容。

謎の学者の虎珪とただの農民であるはずの祖父。

その二人が何故、学のない自分の枕元で長話を続けるのか全く理解できなかった。

私は文字の読み書きができない。祖父が虎珪様に学問を教えていたとは思ってもみなかった。

こうして考え事をしている間にも、雪に反射した白々しい陽光は手元の掛物まで届くほど、日が昇っている。

もう朝なのだ、身体中痛むが畑の様子を見に行かねば、そして今日こそ薪を。足は添え木をすれば引きずって歩けるだろう。

……こんな途方もない話を聞かされても、空腹は満たされないのだから。