【エグゼイド】もしも願いが叶うなら４

覚悟 ページ29

｢君はそんな事を聞く為にAを外に出したのか？｣

流石に分かってらっしゃる。
私は本題を切り出した。

『黎斗さんは‥しーちゃんを大事にしてくれますよね？』

黎斗は伏せていた目を一瞬上げる。
私と目が合うと諦めたように小さく溜息をついた。

｢当たり前だろう？今更そんな事が聞きたかったのか？｣

『じゃあ‥私がいなくなった後のフォローも大丈夫ですね？』

｢‥‥‥勿論だ｣

そこまで話して満足した。
しーちゃんは大丈夫。
きっと幸せになれるだろう。

『良かった！それが聞ければ安心です！そろそろ身の回りの整理しとかないと‥いつ何があるが分からないんでね！‥‥時間がないんですよ』

｢‥‥何か変化が？｣

こんな話をすれば感付かれると思った。
だが、まだ誤魔化すだけの時間はある。

『いいえ？‥でも、そろそろでしょう？後悔したくないんですよ。それと同様後悔させたくないんです』

｢‥‥そうか｣

『じゃあ‥色々よろしくお願いしますね！』


そのままシロがお茶を運んでくる前にCRを出た。
今、彼女に会ったら全て見透かされてしまいそうだったから。








『結局落ち着くのは家の中だって事かぁ‥』

タイムリミットが迫ってきている事もあり、１回職場に顔を出して正常が確認されればその後は比較的自由に動けた。

意識がある内にやりたい事やっとけ‥って事なのかなぁ。

なんて考えながらリビングで1人お茶を飲む。

ソファに座ってゆっくり目を閉じたその時、何処からか声がした。

(‥壊して。‥早くあたしを壊して。)

『ーーー!!!』

目を開けて飛び起きる。
周りを見ても誰もいない。
自分の以外誰もいないという事は‥自分の中から聞こえてきた声なんだと自覚する。


『‥時間がないよ。貴利矢さん』


頭を抱えて泣きそうになる。
この幸せな時間が終わってしまう。

前の自分ならこの場から逃げ出していただろう。
誰にも迷惑掛けたくないから‥。

でも、今回は逃げたくない。
最後の時まで貴利矢と一緒にいたい。
それが自分の我が儘だと分かっていても。


『‥ごめんなさい。』


聞いている人は誰もいないのに思わず口に出した謝罪の言葉。
言わずにはいられなかった。




｢謝る必要なんかないんだけどね‥｣



気が付くと後ろに貴利矢が立っていた。
いつもの優しい笑顔で頭を撫でてくれる。

『えっ‥？夢‥？』

あまりのタイミングに驚いて呟く。
貴利矢は少し笑いながら私をそっと抱き締めてくれた。

その幸せに目眩がする

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