【エグゼイド】もしも願いが叶うなら４

スイッチ ページ26

『‥上手くいかない』

あれこれ試してみたけれど、どうしても上手くいかない。
役に立ってるという実感がない。
しかも頑張れば頑張るほど空回りしている。

『もうダメかもしんない‥。このまま役立たずで終わっちゃうのかなぁ』

大きく溜息をついて自室のベットに倒れ込む。

自分に出来ているのは最低限の家事だけだ。
これじゃただの家政婦だ。
一緒に住まわせてもらってる分家政婦よりタチが悪いかも‥。

考えれば考えるほど落ち込んでしまう。

『ダメだ！これじゃ消えるに消えられない！』

自室を出て貴利矢の部屋に向かう。


『貴利矢さん‥起きてますか？』

ドアをノックすると中から物音がしてドアが開いた。

｢どした？眠れない？｣

部屋で仕事をしていたのか眼鏡の貴利矢にドキッとする。

『あ‥ごめんなさい。お仕事中でしたか？』

｢いや、大丈夫だよ。そろそろ休憩しようと思ってたから。珈琲でも飲もうか｣

そう言って貴利矢は部屋から出てリビングに向かった。

『また邪魔しちゃったな‥』

自分の間の悪さにどんどん落ち込んでいく。






｢で？なんかあったの？｣

珈琲を飲みながら貴利矢は私を見てにっこり笑ってくれる。

優しいな‥。

そんな彼に甘えている自分が嫌になる。
それを何とかしたいのに空回りしてしまう。
正直どうしたら良いのか分からなくなっていた。

『貴利矢さん‥私‥貴利矢さんの為に何が出来ますか？』

もう直接聞いてみよう。
その方が空回りするより良いような気がした。

だが、返ってきた答えは思ってもないものだった。

｢え？Aちゃんが自分の為に？‥うーん。特に今はないかなぁ。｣

『‥‥‥えっ？』

思わず固まってしまった。
出来る事がない‥。
それじゃあ何の為に傍に居るのか分からない。

『それは‥メイドとして役に立たないって言ってます？』

おそるおそる聞いてみる。
すると貴利矢は少し慌てて珈琲を置いた。

｢違うって！Aちゃんは充分やってくれてるからこれ以上仕事増やさなくても大丈夫って事だよ！｣

慌てて言ってくれることに少し安心する。

『ごめんなさい‥。もっと貴利矢さんの役に立ちたくて頑張ってみたんですが上手くいかなくて。どうしたら良いのか分からなくなっていたんです』

素直に白状するとそっと抱き締めてくれた。

｢そんなに頑張らないで。自分はAちゃんが傍に居てくれれば‥それでいいんだ｣





抱き締め返したその時、私の中で何かのスイッチが入る音がした。

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