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-03- ページ32
*世良side*
現実は優しくない。
どちらかというと、残酷な気がする。
順調に進んでいたオペの最中、オペ室の電話が鳴る。
それを取ったのは、丁度その近くに居た看護師の猫田だった。
「はい、第２オペ室です。……分かりました、伝えます。」
ｶﾁｬ…と静かに置かれた受話器の音の次に聞こえてきたのは。
「渡海先生。」
「何。」
「‥深海先生が運ばれてきました。」
「は…？」
受け入れたくない、残酷な現実だった。
「現場で救護作業中に、事故に巻き込まれたそうです。」
「‥容態は。」
「心破裂、だそうです。」
いつも冷静な渡海先生の瞳に滲んでいた焦りが、
深海先生への想いがどれだけのものなかを物語る。
「オペは誰が執刀だ。」
「‥太田先生が執刀されるそうです。」
「ﾁｯ…、よりによってあのポンコツかよ。」
会話の最中も、手は止まることはない。
「メッツェン。」
「はい。」
「冠動脈の縫合完了。‥世良。」
「は、はい。」
縫合を終えた渡海先生は、俺の名前を呼んで。
「太田に伝えろ。」
「え？」
「俺が来るまでに深海のこと殺したら、二度とメス握れなくしてやる、って。」
「え……。」
そう言ったのだ。
「行けよ。」
「あの…、」
「行けよ!!」
「は、はい！」
悪魔の伝言を授かって、第３オペ室へと足を進めた。
・
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作者名：和音
| 作成日時：2019年1月27日 13時
