短編集『恋日記。』【Ｎ】 (ページ2)

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借りた３冊の本を返して、

何となく彼の寝顔を見ていると、

私もその陽だまりの中に入りたいなと思ってしまう。

無意識に彼の向かい側の席に、

特にやる気もない数学の問題集を広げて座った。

課題と言って出された数学の問題集を開くと、

ややこしい数式がたくさん並んでいた。

「‥呪文みたい。」

元々文系の頭の私には数学の問題なんて理解不能で、

思わず愚痴が零れてしまう。

だけど明日までの課題だと出された以上、しないワケにはいかない。

解説がないと、どうせ解けない問題を読むだけ読んでみる。

「分かんない……。」

頑張って自分で考えてみたけどやっぱり解けるはずもなく、

お気に入りのピンクのシャーペンは動く気配すらない。

ﾁﾗﾘと彼の方に目を向けると、

相変わらず陽だまりの中で気持ち良さそうに寝息をたてている。

はぁ…と溜め息を零して、彼と同じように机に突っ伏す。

「数学のバカヤロー…。」

小さな声で別に何も悪くない数学を責めてみたら、

ｸｽﾘと吐息のような笑い声が静かに響く。

「え？」

「別に数学は悪くないでしょ？」

その笑い声に驚いて机に突っ伏していた頭をそっと上げると、
眠っていたはずの彼が陽だまりの中で、意地悪に口角を上げて笑っていた。

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