Letter46 ページ46
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いつでも僕は1人で突っ走ってしまう。
彼女の事だって簡単に浮気だと決めつけてしまう。
簡単に、僕への思いを見くびってしまう。
簡単に、彼女の気持ちを決めつけてしまう。
るぅとくんに対しても、どうせ僕をバカにしに来る。
と思ってしまう
そうやって、人間不信になっていく。
僕は彼女に触発されて、様々なものに触れてきたんだよ。
貴女がいたから、僕は変わった。
「どうしよう、僕、アイツがいなきゃ何も出来ない…」
今泣いたって遅せぇんだよ。ころん。
お葬式にも顔を出さなかった男が何を今更嘆いてるんだよ。
彼女のために何も出来なかった僕が、何をしてるんだ。
「Aに会いたい…謝りたい」
なんで僕が彼にそう言ったのか、今はわかる。
るぅとくんに自分の存在を認めてもらいたいだけ。
るぅとくんに、優しい言葉を掛けてもらいたいだけ。
「そうですね。ころちゃんは彼女に謝ること沢山ありますね」
いつもみたいに皮肉った返事が来るのは分かってたけど。
「でもね、僕はころちゃん以上にAに謝らなければいけないことが沢山あるんです」
るぅとくんは辛そうに話し始める。
「僕だけが彼女の自 殺を止められたはずなのに、気づけなかった…。何がAを守る、だよ。どの口が言えたものか!」
歯を食いしばった彼は本当に悔しそうで、何か言わないと消えてしまいそうだった。
でもこういう時人間って、何も言えないよな。
僕は思いのままにるぅとくんを、抱きしめた。
桜の木の下で成人男性が抱き合っている、奇妙な光景。
でもこれしか僕にはできなかった。
「え?」
「Aの代わりには全然なれないけど、取り敢えずるぅとくんのせいじゃないよ。だから、そんなに気負わなくてもいいの」
なんか僕じゃないみたい。すごい照れくさい。
「ころちゃん前より柔らかくなった?」
うるせぇ!
勢いよく身体を離してゲンコツをぶつけようとした時。
「ころちゃんごめんね…僕なんかがAのこと奪ったりして!Aはころちゃんの事すごい愛してたのに」
彼の方がまた僕に抱きついてきた。
「殴っていいですよ僕を」
すくっと立ち上がった彼の黄色い瞳が僕を射抜く。
僕もそっと立ち上がる。
「何言ってんだよ殴るなら僕を殴ってよ」
次第に笑みが零れた。
また僕らは笑いあえた。
これもまたAのお陰なんだろうな。
僕は彼女に沢山のものを貰ったよ。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時