Letter40 ページ40
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｢待って！ねぇってば！｣
後ろから彼の声が近づいているのが分かる。
外にすら出ることの無い私が彼から逃げるなんて不可能なのは知ってた。
『……！』
瞳の奥が何かを捉えた。
それは、私の目を引き止めて離さない魅力があった。
『ころちゃん……っ？』
青い髪を捕えた瞬間、私は涙が零れそうになる。
『来ないかと思ってた…！』
嬉しくなって、飼い主を見つけて喜ぶ犬の如く彼を目掛けて走った。
尻尾があれば大きく振っているだろうな。
するとるぅちゃんもころちゃんを見つけたのか荒らげた声を出す。苦しそうに。でもハッキリと。
｢ころちゃん！Aを捕まえて！早く！｣
ころちゃんは驚いた瞳のまま私を優しく胸で受け止めた。
あぁ。懐かしくて大好きな香りがする……。
桜の大木の真下、何故か辛い別れ方をした、させた 元彼と抱き合っている私。
『久しぶり。ころちゃん』
私の顔は熱を帯びていた。
ころちゃんのこと結局嫌いになんてなれなかったな。
るぅちゃんが後から追いついてきて抱き合っていた私を勢い良く、でも優しく引き離した。
「僕のAなので辞めてください」
「いや捕まえろって言ったのはそっちじゃん」
相変わらず仲の悪い二人。
まぁ私がそうさせてしまったのだけども。
彼らの視線が今度は私を捕まえる。
真剣な眼差しをくらい私の瞳は泳ぐ。
「帰りますよ。僕と競走できて満足したでしょ？」
「いや僕Aとここで会おうって約束してたからまだ帰さねぇよ？」
｢は？｣
バチバチ二人の間に電気が見えそう。
なんて第三者風に当事者の私は思う。
「だってこんな所にいたらAの命がっ」
「何言ってんのるぅとくん」
ダメだ。るぅちゃんに家に引き戻される前に。
……そして、私が桜に殺られる前に言わなきゃ。
息が切れかける私は、意識を手放す前にそれを渡した。
『これ2人にあげる 』
ピンク色の封筒。例の遺書だ。
「え」
「なにこれ分厚くない？」
だんだんと病気の症状が出てきた。目眩がする。
『うっ』
「A！ほら帰るよ！ほんとうに！ダメだから！こんなとこにいちゃ！」
泣きそうな彼は私を迅速に支え、家に帰るように促す。
やっぱり彼は気の利く私の自慢の旦那さんだ。
一方、ころちゃんは何が何だか分からないまま心配そうに立ち尽くしている。
病気について、話さなきゃ…！
本当のことを、彼に、
今すぐに。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます｡3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます｡1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います｡これを元に書籍化して欲しいくらいです｡颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです｡ (4月1日 3時) (
レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム･.｡*･.｡*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・！大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム･.｡*･.｡*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…！ (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん！素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：颯桜 | 作成日時：2020年3月1日 20時
