Letter38 ページ38
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『……生きてて良かった』
隣ですやすや寝息を立てるるぅちゃんのサラサラな髪を撫でた。
愛を確かめ合ったベットで、彼はそのまま寝てしまった。
疲れてたのに、ごめんね。
『るぅちゃん、私ねぇ、明日サヨナラしようと思うの。もうね、なんか生きるのが辛くなっちゃったんだ』
寝ている彼に向かってポツリと話し出す。
『いつまで生きられるかわからないのに、これ以上希望を望んで生きるのも、嫌になっちゃったんだ』
彼の大きな手をぎゅっと握った。
……私より年下なのに、しっかり者のるぅちゃん。
『…私るぅちゃんにどれだけ救われたことか…!』
夕方あんだけ泣いたのにまた泣いてるよ、私。
『勘違いだけはしないでね。るぅちゃんのせいで私は死ぬんじゃないよ』
『それは、もちろんころちゃんのせいでもない』
寝込みを襲ってるわけじゃないけど、彼の口に触れる。
起きそうにもないからそのままそっと、キスをした。
何度も何度も。
私の気が済むまで。
「んん」
パシッ!
『いったぁ!』
もう一度キスをしようと顔を近づければ彼が寝返ってしまい手が私の顔を直撃した。
完全に私が悪いんだけど。
それにしてもほんとに気持ちよさそうに寝るなぁ。
『……るぅちゃん、るぅちゃん。大好きだよ。愛してる。ずっとずっと』
「……A」
えっ!?
私の頬が急に熱を帯びる。
彼の顔を覗こうと姿勢を変える。
『るぅちゃん、起きてるの…?』
そう聞いても返事はない。
『るぅちゃん?』
「A、僕とずっと一緒だよ」
……!?
『ちょ、るぅちゃん!?何言って……』
そしてまた再び聞こえた安らかな寝息。
『……寝言かぁ』
夢の中でも、私はちゃんと彼の中で生きてるのかな。
夢の中では、せめてその世界だけでいいから私は健康なまま、愛らしい女でいて欲しい。
そしてずっと心の中で生きていて欲しいな。
……いや、たまに思い出してもらう程度でいいや。
もう一度彼にキスを落とした。
これが最後。もう本当に、最後。
最後の口付けはこの世界のどんなものよりも甘くて、切なくて。
あ、やば。
これ以上ここにいたら本当に今度こそ死にたくなくなってしまう。
また生きたいなんて、ぼやいてしまう。
『ありがとうね。天国で見守ってるから』
…私が天国に行けたらね。
私は自分の部屋に戻った。
自分がいつ眠りについたかは分からない。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時