Letter12 ページ12
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『ねぇ帰り遅くない?』
「…そう?てかお前お酒飲みすぎだろ」
『あーあ。今誤魔化したね。浮気でしょ』
僕をぎらついた瞳で睨む。
僕の知らないAが出来上がっている。
こっちこそ逆に他の男によって彼女が変わったのではないかと疑わざるを得ないよ。
「違ぇよ。るぅとくんと飲むって朝言ったじゃん」
┈┈┈┈┈┈┈┈
「…てな訳でAが最近おかしいの、どうしたらいい?」
「…それは病気のせい?」
るぅとくんは僕の奢りだからといって頼んだ高いお肉を美味しそうに食べる。
「は、病気?」
目の前の彼はハッと我に返り慌てた様子で
何でもないですよ、と言う。
「僕もう彼女の事よくわかんないや…」
「じゃあ手放しますか?Aのこと。僕は大歓迎ですよ?」
この男はなんなのだろう。
この人はAの事なんでも知ってる気がしてならない。
「手放したくないよ。つぅか誰にも渡さねぇから。お前にも」
ナイフをそっと置き、ワインを口にする。
…ちょっと背伸びしすぎたかも。
僕の口にはそれは合わなかった。
ガヤガヤ。
高級レストランだからカップルが多く目立つ。
その真ん中にポツリ、僕だけが取り残されたかのようだ。
なんだか年下のくせにるぅとくんは似合っているし。
「最近Aとしてますか?」
────!?
僕はせっかく背伸びして再び口に含んだワインを盛大に戻しそうになる。
「は!?るぅとくん場所考えて!ここ高級レストラン!」
下ネタ好きの僕でも流石にTPOは弁えてるから!
それでも目の前の男は通常運転。
────本当に高級レストランに似合う人は
いちいち場所とか考えませんよ?
いかにも正論っぽいことを言うから
そうなのか?
と変に納得してしまう。
「で、してるの?」
Aがあんな状態で襲えるわけないでしょうが。
機嫌損ねて殴られたくもないし。
これ以上関係悪化させたくないし。
「やってねぇよ」
この時点で僕はAと関係を
"良くする"
のでは無く
Aとの関係が
"悪くならないように"
という思考にシフトしていた。
彼女の本当の気持ちを見ようとしていなかった。
その過ちにもっと早く気づいていたら
彼女は今でも僕の隣にいたかもしれない。
僕の隣で眠ってくれたのかもしれない。
「…なるほど」
こりゃAも愛情不足になる訳だ。
通知音がなる。
意味深な言葉を呟きスマホを弄る彼はこの日から彼女と浮気をしていたの?
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時