Letter34 ページ34
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便箋を丁寧に折りたたむ。
もう書いたことを読み返したりしない。
高校生から書いてるんだもん。
文系が苦手な私には読むことすら苦痛だ。
自分で書いときながらも長すぎて読めないよ。
……しかも折角書いたやつ半分にぶった斬ったし。
読みにくくてならないよこんなの!
まぁるぅちゃんところちゃんには嫌でも読んでもらうけどね。
…というか何十枚あるの!?
5年間書き続けた手紙は遺書と言うより本当に日記みたいに見えた。
私の日記を他人に押し付けるみたい。
それらをピンクの桜柄の封筒に丁寧に差し入れた。
『おぉ、分厚い。のりでくっつくかな…』
やめた。両面テープにしとこ。
『確かここにしまってたはず!』
そう言って開けた引き出し。
懐かしの写真がそこには入っていた。
『んん、なにこれ面白い……遺書に入れちゃえ!』
なんでこの時こう思ったのか、私にはもうわからない。
1人で部屋をうろちょろしながら遺書という名の日記を仕上げていたら夕方になっていた。
カラスが家に帰る頃かぁ。
『んー、折角だしこのまま感傷に浸ろうかな』
ズルズルと棚から引っ張り出したものは、
高校時代のアルバム。
って言っても正規のものではなくて、私が独自に作ったもの。
るぅちゃんと私。
ころちゃんと私。
どれも楽しそう。
この頃に戻りたい、とは言わないけど、ね。
『…るぅちゃん私に引っ付きすぎでは?』
この時から私の事好きだったのかな。
ごめんねぇ気づいてあげられなくて。
『あー、ころちゃん変顔してる』
折角の付き合った記念の写真なのに。
照れ隠しだったら可愛いな、なんてね。
『お、珍しい3人写ってる』
私がスマホを掲げてそこからひょこっと顔を出す2人。
下校中の自販機で奢ってもらった夏のように弾けるサイダー。
何気ない会話をしながら何となく入ったお店でお婆ちゃんから貰った焼き芋。
寒いのにまだ一緒にいたいから、と言って公園で語り合う為のお供の暖かいココア。
……手を繋いでスキップしていた、
あの私の人生を変えた桜並木。
『苦しい』
思い出せば思い出すほど胸がキュッと縛られる。
あれからころちゃんどうしてるかな。
美人な彼女でも出来たかな。
あの声であの優しさで誰かと今を歩んでいるのかな。
るぅちゃんは今まで幸せだったかな。
私なんかで良かったのかな。
次は、
私よりもっと素敵な人を見つけて
幸せにしてあげて。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時