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Letter33 ページ33




今日も、私は生きていた。
ただ残酷なまでに、ここに生きていた。

小鳥のさえずり。
あぁ、私はまだ(・・)生きている。



『……あ、桜いっぱい咲いてる』


のそのそとベッドから降りればもうるぅちゃんは仕事に出かけていて家には私一人しかいなかった。


今日はラジオではなくテレビをつける。
桜の映像を見たかったから。


「こちらの公園には、一足早く桜を見ようと人が沢山集まっています!」



リポーターが楽しそうに公園を歩く。


テレビには桜の開花を喜び、飲んだくれる人や花びらを追いかける子供が映る。


『……ん、美味しい』



るぅちゃんがあれから私の我儘を叶えようと毎日ご飯を作ってくれた。



今日も今日とて美味しい。


「こちら、満開の桜です!」

珈琲の香りを愉しんでいると目に飛び込んできたのは。



大輪の桜。

薄いピンクがなんとも言えないおしとやかな華やかさを持っていて、それは私の心を奪う。


『……綺麗』


液晶画面に写っているだけなのに、どうしても目が離せない。離れようとしない。


『そうか、もう満開なのか…』



もう、私はどんなに美しい桜を見ても

"本物の桜を見に行きたい"

とは思いもしないし望みもしない。


ただ私の心が叫ぶ、


"もうお前は死に時だ。"

と。



あっという間に食べ終えた朝食。

洗濯物等外に出てやらなきゃいけない家事は彼がすませてくれるから、少しでも力になろうと、食器洗いと部屋の掃除を済ます。


その度窓が目に入れば桜も当然のように目に入ってくるわけで。


るぅちゃんは、私が死んだあともこの桜を見て私を
思い出すのだろうか。

はたまたこの桜を恨むのだろうか。



『……恨むなら、弱い身体で生まれた私を恨んで欲しいなぁ』


心にも思ってないことをサラリと言ってみる。

案外嘘ってストレートにつけるものだと私は思う。

病気にかかって、私は自分の気持ちを誤魔化す能力と、


相手を心配させないようなホントのような嘘をつく能力を身につけた。


『人としてクズだな私』


独り言を吐いても誰も何も言わない。


1人の部屋で、私はまた、机に向かう。



『るぅちゃんへ。この遺書は、貴方が私が居なくなった今後も仲良くしなければいけない人と合わせて読まないと解読できない仕組みになってるよ!』




『ころちゃんへ。私は、その人とずっと仲良しでいて欲しいと思う。』



『だから、私は2人に宛ててこの手紙を書きました』




大好きな2人へ。

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作品ジャンル:恋愛
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時

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