初恋メモリー

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毎年、この時期になると近所の河原で行われるお祭りのチラシが入る







毎年さほど変わらないその出来に、私はさらっと目を通すだけなのに







隣の彼は、宝箱を見つけた少年のように目を輝かせていた








「ぇ…これ、え、」







ただのお祭りだ







どこにでもあるような、ただのお祭り







それだけのものなのに、言葉も出ないみたいで紙切れを見ては大きな目をパチクリさせている







「A？」







ようやく発した言葉は、私の名前だった








「すごいね、夏祭り」


「うん？ そんな大したもんじゃないよ」


「うん…俺行ったことないの」


「え、そーなの」








そういう娯楽は一通りやってます、みたいな顔をして








夏祭りに行ったことがないとは、良くも悪くもないギャップだ








「うちの近所、こういうのなくてさ」


「それ、行けば」


「うん、行こうね」


「……はい？」








思わず聞き返す








あれだけ友達が居るのだ、誘えばいいのに








なぜ、私を？








「だって一緒の家に居るんだし、俺はAと行きたいの」








出た、わがまま攻撃








子供帰りしたように大きく頰を膨らました顔は、悔しいけれど可愛い








逆らえないんだ、この顔には







「分かったよ、分かったから」








満足気に笑う、その平べったい笑顔に








胸の奥が暖かくなった気がした







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