朝顔に包まれて【一期一振】 (ページ29)

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二十九、ページ29

にこにことして「着けてみてくだされ」と言ってくる一期。
しかし鏡もないので自分ではつけられない……
というか、本当に貰ってしまっていいのだろうか……
突然渡された品物と一期を交互に見て目を瞬かせる。
どういう風の吹き回しなのだろう？
分からないことだらけで首をかしげることしか出来なかった。

すると、一期は私の手からそっと簪を手に取った。
何処から出したのかヘアゴムを口にくわえ、慣れた手付きであっという間にスタイリングされた。
どういうことなの……
呆然とする私に、一期はこう口を開く。

「実は、乱に聞いたのです」
「何が？」
「主殿が、苦しまれていることを」
「……」

私は、口を、閉じた。
そう言えば、乱は相談相手みたいなもので、全部とまではいかないけどそれなりに喋っていたのだ。
あの、置かれた手紙のことも。
まさか全部バレたって言うの……？