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二十八、 ページ28
「主殿」
そう呼ばれてくるりと振り返る。
一期が、両手を後ろに隠しながら立っていた。
なんの用だろう、と思いほんの少し歩み寄る。
「何？」
「少しだけでいいのですが、お時間ありますか？」
「え？ええ、大丈夫……」
「ではこちらへ」
言われるがままに手を引かれ、連れていかれる。
本丸の、裏。
本丸が影になって光が届きにくい。
外では短刀たちが遊ぶ声やら、馬番をする子たちの声が聞こえる。
いったい何をする気なのだろう……
「ねえ一期、」
「主殿にお渡ししたいものがあるのです」
「うん」
「受け取ってくだされ」
と、後ろ手で持っていたものを一期は渡してくれた。
朝顔の髪飾り。
具体的に言うと、簪だった。
造花とは思えないほど朝顔が精巧に作られていて、「ありゃ」とつい声に出した。
「驚きました？」
「驚いた……何、これ」
「渡したいものですぞ」
「くれるの？」
「勿論です」
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作者名：ひな丸 | 作成日時：2016年6月6日 22時
