２川上さんと…？ ページ2
「……おい」
覗き込んだ顔は真っ白で、本当に生きているのか目を疑った。自分の息が、ソイツにかかるほど近づいて声を掛ける。
数秒後、ぴくりと動いた瞼。ゆっくりと重力に逆らって押し上げられていく。
「あ、生きてた」
思わず、心の声が漏れてしまったが、今はそんなのどうでもいい。
それより―――。
「こんなところで何しとんの？」
「……」
「喋れそうなら、何か言うて？」
こわがられないように、優しめに声を掛ける。それと同時に、ぐっとさらに顔を近づけると、今まで一点を見つめていた瞳がきょろりとこちらを見返した。……ぱっと目が合い、思い切りそらされる。その瞬間、目の前には大きな熊の顔。
いきなり現れた熊に、反射で顔を背けて距離をとる。
「ぼくは、くま。あなたは、だれ？」
「喋った。……俺か？俺は、―――通りすがりの男の人や」
川上、そう名乗ろうか迷い、躊躇い、そしてやめた。だって、相手が熊やもん。
「そう。……こえ、かけてくれてありがとう。じゃあ、おやすみ」
熊が喋り終えると、再び現れた人間の顔。熊の行方を探せば、ぎゅっと抱きかかえていた。
「……え、嘘やん。寝るなって」
大きく肩を揺さぶり、起こそうとする。
おやすみ、そんなん死ぬ気やん。何言ってんだ、こいつ。頭、イカれてんとちゃうか？
いろんな言葉が頭を埋め尽くすが、どれも口にはできなかった。
「んもう。ぼくは、ねむいの」
再び現れた熊の顔は心なしか怒ったように見えた。
熊の人形が怒った顔をしている？
ついに、俺も幻覚を見るようになってもうたか、それはこの寒さのせいやな。
水上のように声に出すことはしなかったが、自分で言って、自分で否定する水上あるあるがついに川上あるあるへと変化してしまったようだ。
ふうと、深呼吸をして、脳に酸素を送り込む。
一度目を瞑って、冷静さを取り戻すなり、再び目を開けて声をかける。
「そりゃあ、熊だもんな」
「……」
「おい、無視すんなや」
「おやすみ」
「寝るな」
「なに」
「ここで寝たら、死ぬで？」
「……じゃあ、キミはぼくをおうちにあげてくれるの？」
「自分の家に帰れや」
「ないよ」
「は？」
「かえるところはないの。だから、ここでねるの。おやすみ」
「待て待て。おやすみじゃない。とりあえず、何か食うか」
「……」
「行くぞ」
そのまま家に連れて帰るのも、どうかと思うので、とりあえず暖かそうな食事処へと連れて行くことにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 272人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑞西（シャラルー☆）(プロフ) - ゆのさん» わわ…っ、ありがとうございます！確かに、主人公ちゃんは可愛らしい（真顔）素敵なパワーをいただけたので、さらに良いものを提供できるよう頑張ります(*´▽｀*) (2019年12月25日 18時) (
レス) id: 705dc09b7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - 主人公が可愛くて、お話も素敵で、情報の管理もしっかりされていてすごいと思います！お話楽しみに待っているので、作者さんのペースで頑張ってください！応援しています(p｀･ω･´q) (2019年12月25日 9時) (レス) id: 6ede61fc28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
