戦国BASARA〜愛しき花よ、切なき花よ〜【希望の道】

３９６．さらば、友よ ページ17

――現在。小田原城・合戦後、秀吉は瓦礫の中に横たわっていた。
　政宗に砕かれ、裂けた鎧装束の懐から、何かを取り出す。――それは、ねねのお守り袋。


秀吉「貴様の、小さき友が届けてくれたが…」


　微かにその手首を返し、よりよく見えるようにして見つめ、


秀吉「我に、これを持つ資格はない――」


　決して涙など流す事の許されない、秀吉の深い感情――微かに、かつて慶次の友だった頃の穏やかさが差しているのみ。
　お守りを空へと差し出すようにして、


秀吉「お前が…持っていてやってくれ…」


　瞼が震え、


秀吉「…慶、次――」


　冥くなるその視界を閉じられていった。


＊ ＊ ＊


　風が吹く原野。


慶次「…そうかい――」


　それまでよりも少し強い風が吹き、伏せられたその眼の端から、やがてはらりと涙が伝う。
　初めて、変節後の秀吉と思いを共有したかのように。秀吉の代わりに涙を流すかのように。投げ出されていた腕を震わせながら浮かせ、


慶次「この、大馬鹿野郎の――」


　その手を目の前へと運び、泣き微笑いで、


慶次「…分からず屋め…！」


　その手の中に、ねねのお守りが還っていた。


＊ ＊ ＊


　小田原城・合戦後。
　生死不明の瞑目した秀吉の手から、そのお守りは消えていた。

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