387.半兵衛、散る ページ8
最初は何かの冗談かと思った。悪戯の笑顔で驚かせているんだろうと。
でも、違った。優しく穏やかな眼差しで微笑んでいた。
(なんで……そんな顔をするの?冗談だって言ってよ、半兵衛)
最愛の人を殺す行為に迷い、握りしめられた手にある関節剣を震えるA。
半兵衛「――本当は僕も、もっと生きたかった」
彼の真意の言葉に、俯いていたAは驚いて半兵衛を見つめた。
半兵衛「僕を生かしきれる人間などいないと世の中に幻滅しきっていた僕に…命の時をくれたのは秀吉だった。この命はもうひとときも無駄にできないから、せめて秀吉のために全てを捧げていこうと…。秀吉の天下を見られればそれでいいと思っていた。
けれど、Aが生まれて、Aと出会って、Aを好きになって…それで気づいたんだ。僕の全てを捧げるのは秀吉じゃない。――君なんだと」
思わず感極まりそうになり、Aはぐっと涙を堪え静かに聴いた。
半兵衛「誰よりもAを支え、寄り添い、守りたい。君の声を、君の笑顔を、君の温もりを、一緒に幸せな時間を築きたい……そう思っていた。
……だけど、天は僕達の夢描く幸福を許されなかった。それが僕の定められし運命…命の時の価値がなくなった時、君の手で僕の時間を止めてほしい。…そう決めてたんだ」
A「……だったら……だったら、なんで私にこんな役目を押しつけるの?…昔もそうだった。自分達の事ばかり都合を決めて、私の気持ちを無視して…私がどれだけ苦しんだのかわかってるくせにっ……」
堪えきれず瞳から涙を流すA。半兵衛は彼女の頬に添える。
半兵衛「でも、政宗君は違う。彼なら君を傷つけず、守ってくれる。僕はねねと共に君達の幸せを祈っているよ」
添えていたAの頬を離し、彼女の手にある凛刀を掴む。
A「……半兵衛?」
半兵衛「生き延びて、幸せになってくれ――」
半兵衛は手に力を込め、自ら刃を突き、貫いた。
A「…嫌……いかないで、半兵衛!死んじゃ嫌ッ!!」
泣き叫んだ直後、不意に半兵衛はAの唇を交わした。鉄のような血の味がしたが、甘くて淡い蜜の味だった。
半兵衛「…愛してるよ、A」
最期まで慈しみの微笑を浮かべると、半兵衛は飛沫あがる海へと落下していった。
A「半兵衛ーーッ!!」
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コマさん - 最初から読みました!とても感動しました。゚(゚´Д`゚)゚。 (2017年5月7日 12時) (レス) id: 29a322c6a9 (このIDを非表示/違反報告)
クイナ - えーと、楽しく読ませてもらってんスけど...。ワンピース入ってますよね。何か全然違和感無くておもろいッスよ (2016年3月28日 11時) (レス) id: 878c05571f (このIDを非表示/違反報告)
舞 - はじめまして、舞です。私も最初っしょから読ませていただきました(^O^)とても素敵で感動しました。本や漫画にしてもおかしくないです。素晴らしい物語でした。ありがとうございました。 (2014年5月9日 22時) (レス) id: 7c57ccdb7c (このIDを非表示/違反報告)
☆ひいらぎ☆(#´^`#)/(プロフ) - 最初っから読ませて頂いたのですか、凄く感動しました!私も結構涙脆いので、途中でボロボロ泣いてましたwとてもよかったです! (2014年3月9日 4時) (レス) id: fcd858585a (このIDを非表示/違反報告)
花海月ヒリス(プロフ) - 双龍阿修羅@元朱雀さん» 見てくれてありがとうございます!今後出される作品も楽しみに待ってて下さいね(^_^) (2013年11月11日 22時) (レス) id: faf94e31c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花海月ヒリス | 作成日時:2013年9月12日 16時