水色 10輪目 ページ34
先生の最後の言葉は少し引っかかっているけれど、私の気持ちはスッキリしていた。
確かに、先生が言う事も一理ある。大人になって振り返った時に、あの時想いだけでも伝えていれば、と後悔することもあるかもしれない。学生の本分は勉強と言うけれど、きっとそれだけじゃなくて、大切なものが山ほど転がっているのが、学生時代なんだと思う。
けれど、私の想いは一度は散ってしまったもの。相手は手の届かない遠い人。私を好きだと言ってくれたブン太も、私とはまるで違う世界にいる人。過去の恋も、悲しい結末だった。
だからもういいんだ。何かが、今は恋をすべきでないと知らせている気がする。ひねくれてるだけかもしれない。でも、今は自分の夢だけに集中しよう。
柳君には感謝しないといけない。今度会ったら、ちゃんとお礼を言おう。
ただ、帰り道に自宅に近付くと、憂鬱になった。いくら自分の気持ちが片付いても、出た結果は変えられない。両親にこの結果を伝えないといけない。
帰りたくない、無性にそう感じて足が遅くなる。けれど、そんな思いも虚しく家までの距離は縮まり、ついに門の前に着いてしまった。
「なぁ、ちょっと話さなねぇ？」
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ブン太が私を誘う。
「うん、いいよ。いつもの公園？」
一時しのぎではあるけれど、少しでも帰る時間を遅らせられることにホッとして、心なしか声が弾む。
すると彼は頭の後ろで手を組みながら、ちらりと振り返って微笑んだ。
「おう……帰りたくねぇんだろぃ？」
「え、あ、うん」
何で分かってしまうんだろう。胸が温かくなるのが分かる。
同時に、自ら離れる心の距離。こんなに素敵な人が私を想ってくれているなんて、畏れ多すぎる。「待ってて」と言ってしまったこと、謝らないといけない。
後ろ手に組んで、俯きながらブン太の後を着いて行く。寂しさや切なさを紛らわすようにアスファルトに転がる小石を蹴りながら。
いつものベンチに隣り合って座る。もうこの時間をもらうのも今日が最後にしようと心を決める。
まず口を開いたのはブン太だった。
「ごめん……」
「え？」
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
