開戦 右翼後方部隊 ページ7
あとは振り下ろすのみ。親友の仇を…討つ！
ぐさっ
鈍いその音は、私の右手から鳴った。黒い剣が私の右手を切り落としているのだ。右手に握っていた緋煌剣も地面に転がっている。だが、そんな訳はあるまい。あの時、私はたしかに吹き飛ばしたのだ。吹き飛ばし…た…？まさかっ！
「わざと手から離して…狙いを定めたのか！」
「…。」
黙っていたが、シェータは少し頷く。自分の手から緋煌剣が離れたせいで、記憶解放術の効果が薄れてきた。天命の急な減少のせいで、意識が朦朧とする。
「…せめて楽に…。」
しゅっ
軽やかで優しく空を切る音は、私を斬った。死ぬ寸前、私は思い出した。何故忘れていたのだろう。私はシェータという名前には聞き覚えがあった。静かに音を出さずに斬り、シェータ自身も声をあまり出さず振る舞う。そこからつけられた異名。それは。
無音のシェータ
「…。」
シェータは力尽きたフュエル・キュミステル・サスラーに一瞥し、前方のゴブリンへと剣を進め始めた。
中央前方部隊の大きな闘いが終わった頃、フュエルという隊長を無くした暗黒剣士隊は右翼後方部隊周辺に着地した。
「ファナティオ様…っ！」
僅かに息を呑むレンリ。動揺した表情を隠すことが出来ていない。それもそのはず、レンリは本当の命の取り合いというものをしたことはないのだ。
「落ち着きなさい、レンリ。この中で目立った実力者はいないみたいよ。大丈夫。半分任せられる？」
「はい！」
「ありがとう。行くわよ！システムコール。エンハンスアーマメント！穿て、天穿剣！」
ファナティオは、天穿剣の武装完全支配術を発動した。迷いなく剣先を暗黒剣士隊へと向ける。
「はっ！」
放たれた閃光は、見事に一人の暗黒剣士を貫いた。すこし怖気付く暗黒剣士隊に更に追い討ちをかけるべく、ファナティオは敢えて今名乗った。
「私は整合副騎士長、ファナティオ・シンセシス・ツー！貴様ら全員、ここで食い止める！」
迫力のこもった名乗りは、暗黒剣士全員を萎縮させた。
「行くぞっ！」
もう一度剣先を向け、今度は二度放つ。
《片手剣
一人の暗黒剣士が、一撃の
「人界の安寧を脅かす貴様ら全員…この地に葬ってやろう！」
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作成日時：2019年11月23日 12時
