緋煌剣 ページ6
緋煌剣の武装完全支配術。それは、自身の身体能力の上昇という簡単なものだ。自在に身体能力を上昇させ、逆に下げることも可能である。しかし、上げれば上げるほど血が剣に吸い取られていくのだ。この剣が赤いのは、前の所有者の血を吸い取っているかららしい。では、その中に次は私が入る番であろう。私は隊長に任命された時から決めていたのだ。もし、あの黒髪の整合騎士がいれば必ず斬ると。
「行くぞ…シェータ・シンセシス・トゥエルブ！」
ドッ
自身の身体能力を二倍にして、地面を蹴った。かなりの速さでシェータの懐に入り込むことが出来た。このままいけばあっさり斬れてしまうのでは。そう思ってしまうほど、素早く入り込めたのだ。しかし、一騎当千の整合騎士の前には、そのような考えなどはいとも容易くねじ伏せられてしまった。
「ふっ。」
ぼそっと声を出す。シェータの呟きは、数秒で宙に消えてしまった。素早く鋭い、身のこなしとは裏腹に。
スパンッ！
私の右脇腹が大きく裂かれた。何故、この角度で右脇腹を斬れたのか全く分からない。傷口からは、血がとめどなく溢れ始める。このままでは、大量の出血でいずれ死んでしまうだろう。なら…この緋煌剣に全てを賭けよう。
「リリースリコレクション！」
この叫びは、緋煌剣において死を意味する。この剣の記憶解放術。それは、自身の血を超速度で吸わせる代わりに身体能力を二百三倍にするというものである。二百三という数字は、これまで緋煌剣が吸ってきた天命値のはじめの三桁である。私が今吸わせる事で、次の所有者の時は二百五倍ほどにはなるだろう。
「はぁぁぁぁああああああああああっ！！！！」
全身の力を全て活動させ、私独自の流派の最大奥義を繰り出す。
《キュミステル流 片手剣
この剣技は、三連撃という珍しいものだ。暗黒界において、連続技を使う剣士は少ない。そのため、私のような女剣士は男剣士に負けてしまいがちなのだ。そこで、どうにか勝つために編み出したのが連続技《紅黒》だ。初撃で、まず剣を右から左にかけ薙ぐ。
「…っ！」
私は剣の持ち手に丁度狙いを絞り、剣を振るった。声にならない焦りと共に、シェータは黒い剣を手から放してしまう。二撃目。上昇しきった身体能力を駆使し、切り返しでシェータの硬すぎるほどの鎧を両断する。
「三撃目ッ！」
上から下に瞬時に斬り下ろすため、両足で踏み込む。三撃目に繋がるまでの時間およそ一秒。
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作成日時：2019年11月23日 12時
