イーディスとエルドリエ ページ32
そう声を発し、薄茶色の、黒のリボンで一つに束ねた長い髪をふわりと浮かせた。
「いくよ、霧舞。」
霧舞と呼ばれた飛竜は、どんどん螺旋階段を下がっていくような軌道で下降していく。
「アリス。絶対辿り着いてね。また会えたら、一緒に温泉でも入りましょ。」
イーディスは、こちらに一瞬微笑んだ。すぐに敵に向き直る。
「一人では無茶です！」
「では、私も加勢しましょう。」
ぐいっ、と滝刳を下に向けて、エルドリエはイーディスの近くに降り立った。
「エルドリエ、イーディス様！」
下に降りていった二人の整合騎士を脇目に、私達はワールドエンドオールターへと進んでいった。
「エルドリエ、まさかあんたが来るとはね。」
「イーディス様が行かれたのです。それに、私だってアリス様をお守りしたい気持ちは同じ。」
「そうね。すぐに蹴散らしてすぐに追いつくよ！」
「元からそのつもりだ！」
イーディスは、腰にかけた鞘からゆっくりと暗斬剣を抜く。
「私は、整合騎士イーディス・シンセシス・テン！」
「同じく、エルドリエ・シンセシス・サーティワン！貴様らは、私達がここで葬り去る！」
恐らくだが日本語を喋る謎の騎士二人が、俺の前に立ち塞がった。もともと、倫理コードすらない、プレイヤーキル有りというよく分からない仮想世界に入って来たのだが、ますます訳がわからない。しかし、立ち塞がる騎士は敵意を剥き出しにしている。ならば、戦うしかないだろう。もともと俺は、アルヴヘイムで仮想世界に興味を持ち、自分で言うのもなんだが、かなりこの手のゲームには自信がある。ソードスキルがある程度なら発動出来ることも確認済みだし、女性と男性のペアにこの数で負けるとは思えない。
「「システムコール。エンハンスアーマメント！」」
システムコールという言葉が聞こえた。日本語を喋ると思っていたのだが、どうやら英語までも習得しているのか。などという余裕な事を考えていた俺にとって、次の瞬間の出来事はあまりにも衝撃的な光景だった。
「散らせ、霜鱗鞭！」
男の騎士が持つ青みを帯びた鞭が、有り得ない長さで、有り得ない角度に曲がっているのだ。急角度で曲がって来たその鞭は、バシィン！という重めの衝撃音と共に俺達の内の千人ほどをログアウトさせた。
「ya...」
思わず声が出てしまったが、息つく暇などは一切与えずに女性騎士が更に仕掛ける。
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作成日時：2019年11月23日 12時
