ヴァサゴの策略 ページ4
シボリは刀を構え、走り出す。霜鱗鞭に飛ばされたものの、体力はそこまで減らすことが出来ていないようだ。
「燃えろ！」
矢を二本放つ。火を纏い、かなりの速さで矢は戦場を駆け抜ける。しかし、シボリの華麗な身のこなしに避けられてしまった。ゴブリンといえど、やはり族長である。得意な近接戦闘に持っていくための技術は、一流だろう。そんな考えを巡らせる暇もない程の早さで、シボリは剣を振り下ろす。
「ふっ！」
デュソルバートは、剣をシボリの刀とぶつけた。キリキリという音を立てながら、シボリの剣は受け流される。少し体勢を崩したシボリを、デュソルバートは斬る。しかし浅い。
「その程度で、殺せると思うな！」
刀を逆手に握り、そのまま斬りかかるシボリ。押し切られるのを防ぐため、デュソルバートは一歩、二歩と下がる。
「喰らえ！」
一瞬で矢を取り、引く。不死鳥の如く飛び出した矢は、シボリの右腕を掠めた。
「熱い…熱い！」
刀を振り上げ、シボリはデュソルバートの懐に入り込む。すぐさま弓をしまって、デュソルバートは剣を刀にもう一度ぶつけた。火花を散らし、軽やかで耳障りな音が間近で鳴り響き続ける。
「「はぁぁぁ！！」」
デュソルバートの叫びとシボリの雄叫びが混ざり合った頃。暗黒剣士隊が動こうとしていた。
「あのオーガ族のやつ。勝手に動いたらしいぜ。」
「好きにさせておけ。」
皇帝ベクタことガブリエルに、近況報告を兼ねて世間話をしようとしたものの、すぐにあしらわれてしまった。まあ、そんな暇ももうないのだが。
「暗黒術師隊、準備は出来ているか？」
「万全です。」
今、万全です。という声を出した女の名は、ディー・アイ・エルだ。なぜか名前の全てがアルファベットという共通点があるが、理由は分からず見当もつかない。
「ヴァサゴ様。そろそろ出陣なされますか？」
「あぁ。頼む。お前ら！行くぞ！」
うぉぉおおおお！！
暗黒剣士隊の全員が、闘志を滾らせる。俺たちは全員、所定の場所についた。
「唱えよ！」
ディー・アイ・エルがそう叫ぶと、術師隊は声を合わせて叫んだ。
「システムコール。ジェネレートエアリアルエレメント。ディスチャージ！」
ドドッッッ
耳を裂くような音と共に、暗黒剣士隊は大空へ舞い上がった。東の大門を数秒で超え、人界軍の後方部隊の付近で着陸する。
「貴様ら…暗黒剣士か…！」
「あぁ。俺は暗黒剣士隊隊長ヴァサゴ。お前らを斬らせてもらう…！」
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作成日時：2019年11月23日 12時
