一瞬の休息 ページ29
入り口の布からうっすらと溢れてくるソルスの光が、テントの中を少しだけ照らしてくれる。負傷者や疲弊した者を寝かせるためのテントの為、蝋燭などの明かりになるようなものは無い。寝る場所といっても、中に石や砂などを詰めて強度を保った木箱を幾つか並べ、その上に一枚毛布を被せているだけだが。
「アリス。体力は回復してきたか？」
「ええ、再び前線に戻っても支障はありません。キリト、お前こそどうなのですか。」
「うーん…まだ本調子とまではいかないけど戦えるよ。」
「そうでなくては困ります。そろそろ助けてくれた三人も…。」
「あぁ、そうだよな。早く行こう！」
俺は、もう一度前線に出ることを決意しテントの端の方にかけた黒の剣を腰にかける。鞘からするりと剣を抜き、体の調子を確かめるために一振り。戦う前でこの肩の感触なら充分だ。鞘に丁寧に滑り込ませて、夜空の剣をしまう。
「私も一度振ります。近くにいると怪我をしますよ。」
忠告をした後、アリスは剣を一度振った。金色の煌びやかな刀身は、艶のある輝きを放っている。
「わっ、まぶしっ！」
入り口の布をひらりと避け、目を少し抑えながらテントに入ってきたのはユージオだった。
「ユージオ！もう体調は大丈夫なのですね。」
「うん、アリスが運んでくれたんだよね。ありがとう。」
アリスはお礼などは要らないと謙遜した後、ユージオに今の戦況を簡潔に説明した。
「あの後そんなことがあったんだね。まさかゴルゴロッソ先輩が逆浪を最初から使うなんて…。」
「その、逆浪？ってなんなんだ？」
「アリスには教えてもいいけど、キリトには秘密にしておくよ。」
「な、なんでだよ！」
「ぷっ、ぷふふ、ぷはははっ！すいません！思わず吹き出してしまいました…やっぱり二人を見ているとなんだか笑えてしまって。」
アリスは右手の人差し指を曲げ、笑いすぎたせいで覚えず出た涙を拭った。この光景は、なんだか昔を彷彿とさせる。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか。」
「おう！」
「うん！」
テントの外に足を踏み出すと、ソルスの光が急に溢れ出してきたせいで一瞬目が眩んだ。しかし、焦点はブレない。必ず終わらせてみせる。この戦争を、三人で。絶対にアリスを攫わせたりなんてしない。
［時間がない。簡潔に言う。暗黒軍の狙いはアリスの嬢ちゃんただ一人だ。ダークテリトリーの更に向こう、ワールドエンドオールターに先に辿り着いて欲しい。頼む。］
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2019年11月23日 12時
