開戦 中央後方部隊 ページ13
様々な声色の断末魔は、水素の爆音によって掻き消された。一掃されたゴブリン隊は、塵の一つも残さずに空間神聖力へ変わっていく。
「システムコール。セイクリッドエナジー。コンセントレーション。セーブ。」
一つの場所に空間神聖力を凝縮させ、シャリュマッテの手の中で保存する為の式句を唱えた。
「シャリュマッテ様…！」
シャリュマッテは、近衛軍兵士と思われる人物に向いて言葉を発する。
「どうしたの？」
「ベルクーリ騎士長より伝言があります…！」
「ベルベルが？何かあったの？」
「はい…ベルクーリ騎士長は、前から数万のミニオンが人界に投入されるという情報を得ていました。その為、事前に時穿剣で準備をされていました。」
「さっきの斬撃…ミニオンが相手じゃなかったよね？」
「はい。ですので、これから数万のミニオンが人界に到来します…！」
その事実は、冷徹に私を…いや、別部隊にいる整合騎士も含め全員を震わせた。
「ねえ、あれって…！」
黒い雲のような物が、人界軍になかなか早い速度で流れ込んでくる。
「報告ありがと！下がってて！」
残っていた水素を黒い雲に向け二つ打ち出す。
「ディスチャージ！」
数十のミニオンは群れから離れ、地に落ちる。しかし…この数はまさに絶望的だ。私では全く対処することが出来ない。周辺の神聖力は私が保存している為、少し枯渇気味だ。ベルベルにも指示された。空間神聖力は保存しておいてくれと。大勢のミニオンが人界に流れていく様子に、唇を噛んで眺めている事しか出来ない私は、苦し紛れに式句を唱えた。
「ディスチャージ…っ！」
「イーディス様。ここは私が。」
「気を付けてね、アリスちゃん！」
金木犀の剣をゆっくりと鞘から抜き、正面に構えた。
「システムコール。エンハンスアーマメント。」
少し低めの声で、私は武装完全支配術を発動する。刀身は、金色で幾千の閃きへと変わった。
「舞え…花たち。」
小父様が予見していたミニオンの大群の正面に構える。雨縁が飛んでいるのに私が乗っているだけだが。
「来ましたか…！」
正面に蠢いている、話によると数万のにも上るミニオンを見る。一切の怖気もない。
「雨縁…放て！」
青白い熱線を、雨縁はミニオンに向けて思いっきり放つ。それに続くように、アリスは全神経を集中させて金木犀を放った。黄金の煌きはミニオンを斬り散らし、地に落とす。
「私がここにいる限り…人界へは通さない！！」
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作成日時：2019年11月23日 12時
