ベルクーリの指示 ページ12
「ねえ、キリト。あれ何？」
大勢のゴブリンを斬り捌き続けた成果もあり、だんだん数も少なくなって今は意識の向ける先にも余裕がある。ユージオが指差す方向へ目をやると、そこには紫色に染まった不規則な形状の球があった。
「あれ…ダークテリトリーの術じゃないか…？」
「だよね…。でも、あれが来たら中央前方部隊なんて直ぐに滅んじゃうんじゃ…！」
「たしかに…。シェータさんだったよな？」
シェータを心配するような台詞を吐き続けていた俺達に、「お前達はお前達の闘いに集中しろ」というメッセージがベルクーリから届けられたような感覚と共に、紫の正体不明の球は両断された。
「何だ…今の…！」
「分かんない…。」
呆気に取られている俺達に、更に追い討ちを掛けるかのようにリザレクは熱線を放った。
「部隊の配属場所って…リザレクさんはベルクーリ騎士長と一緒だったよな。」
「じゃあ、あの正体不明の斬撃はベルクーリさんの武装完全支配術？」
「と考えるのが自然かな。全く…何故整合騎士はこうもチートなのかね。こっちはクエストやレベリングでようやく強くなれるっていうのに…。」
「ち、ちー…と？」
「い、いやなんでもない。こっちの話だよ。さあ、この辺りの奴ら全員蹴散らすぞ！」
「任せてキリト！」
青薔薇の剣と夜空の剣を振り下ろし、左翼前方部隊は前線を瞬く間に制圧した。
「伝令だ。全部隊に知らせてくれ。」
ベルクーリは、近衛軍の八人にそれぞれ行って欲しい場所と伝えて欲しい用件を伝えた。用件というのは、ベルクーリが前から予見していたものだった。
「もうじき数万のミニオンが人界に侵攻して来る。手の空いている者は全員ミニオンにかかれ。」
ベルクーリの言葉をしかと胸に秘め、八人の伝令兵は各部隊に散らばった。
「システムコール。ジェネレートアクウィアスエレメント。フォームエレメント。バレットシェイプ。クアドラプルインプレメンテンション。」
長らく戦闘を続けているであろう右翼部隊は、そろそろその闘いを終えようとしていた。光閃銃に素因を装填し、放つ。丁度いい頃合いになれば
「ディスチャージ！」
そう叫び、敵兵をまとめて蹴散らす。素因に装填したのは四発。あと二発もあれば、流れ込んで来るゴブリンを全員殺せる。その確信を持って、シャリュマッテは二発の水属性を持つ素因を放った。
「ディスチャージ。」
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作成日時：2019年11月23日 12時
