【国見英】ねぇ、国見くん。【短編集】

いろいろ ページ39

・


「はい、英！！」

満面の笑みでド本命だとわかるであろう綺麗にリボンが結ばれた箱を渡せば、「……え？」と口を開ける愛しの彼氏さま。


「え？？」

「え……何？」

「は？？」


しばらく沈黙が続いた後、英がひらめいたような顔をした。


「ああ、今日バレンタインか」

「今頃？！」

「普通に忘れてたわ。ありがと。」

悪びれる様子もなく、淡々と私の手に握られていたチョコを取って、何十分も苦戦したリボンを綺麗な指で呆気なくほどいてしまう英。



「もう！そうやって英は忘れてばっかり〜！私の誕生日とか覚えてるの？今日だって昨日遅くまで頑張ったのに！もっと一日一日を大事に…っ」


「ちょー上手い。こんな彼女持って俺、すごい幸せ」

キスをされた時に口に入ったらしい私のチョコは、最高に甘かった。



・(違う話です)


「国見くん、おはよう」

「おはよ」

そう言うと笑って、席に着いてしまう彼女。

…え、チョコは？

まあまあ、まだ今日は始まったばかりだ。



「国見くん、お昼食べに行こう」

「うん。」

「見て、今日はね、卵焼きが上手く巻けたの！はい、あーん」

「ほんとだ、美味しい」

「でしょ！嬉しい！」


くしゃっと笑うAの笑顔は周りの人も笑顔にさせてしまう。

ああ、可愛いな、と頭を撫でると真っ赤になる顔。

「もう、恥ずかしいじゃんばか！」


大丈夫、まだ一日は半分しか終わっていない。



「国見くん、帰ろう！」

「うん」

「夕焼け綺麗だね！寒い…！」

「マフラーいる？」

「え、国見くんも寒いでしょ！」

「俺はカイロ持ってるし」



「……じゃあ手、繋いで貰ってもいいかな。」

「…もちろん」


チョコ以上に甘いものが見れたから、もういいか。


「国見くん」

「うん？」

「今日ずっと、知らないフリしててごめん」

「え」

「チョコ……作ったんだけど、自信なくて、ホント、捨てちゃっても良いから、気持ちだけ……」

俯いていて表情はよく見えないけれど、きっと悲しそうなんだろう。

ごそごそと鞄を漁る細い腕すらも愛しくて。


「っあーー、良かった」

「え？？」

「ずっと待ってたのにくれないから。俺以外に渡したのかと思ったじゃん」

「そんな訳ないでしょ！国見くん以外に渡す人なんていません！…あ」

「ほんと、超可愛い」


くくっと笑ってやれば赤くなる顔。

受け取ったチョコレートは、不味いはずがないのを俺は知ってる。

いろいろ2→←同担拒否

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す