【国見英】ねぇ、国見くん。【短編集】

同担拒否 ページ38

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「きゃぁああ！」

「英くーん！」

「こっち向いてー！」


私の周りは、敵ばっかりだ。


・


「だから……アレはファンだって。そんなんにいちいち嫉妬されても。好きなのはAっていつも言ってるじゃん。」

「ごめんなさい…。」



だってだってだって、三角関係なんてレベルじゃないじゃない。

ステージの上で輝くきみと、たくさんのペンライト、かわいい女の子たちの歓声。

そう、彼は今をときめく人気アイドル。私がその彼女だなんて、ファンが聞いたら号泣ものだろう。


どうすれば良いんだろう。

どうしたらあの子たちなんて眼中にないくらい英をメロメロにさせられるんだろうか。

私の悩みは尽きない。



・


「あの女の子たちばっかり、ずるい。
英の笑顔なんて、私だけが知ってればいいのに。
英にお手振り貰えるなんて私だけの特権なのに！！」


ライブの度にこんな可愛いことを言ってへそを曲げてしまう愛しい彼女。

でも少し意地悪したいのと、束縛がきつくなってきたら嫌なので冷たい態度を取るようにしている。


「だから……アレはファンだって。そんなんにいちいち嫉妬されても。好きなのはAっていつも言ってるじゃん。」


そう言うとごめんなさい、と暗い顔をする君。

可愛い、なんて思ってしまう俺は性悪だろうか。


・


「あれ、来てない……珍し」

いつもなら俺がどんなに早く来ても先に待ち合わせ場所に来て、鏡をチェックしているのに。



「あ、っきら……ごめ、っは……」

そう考えてから3分もしないで全力で走ってくる君を見つけて、すこし嬉しくなる。


「別に良いけど。どうしたの？」

「いや……ちょっとね、あは」



行こっか、と振り返って驚いた。


「どうしたの……それ、」

「いやあ……えへへ、に、似合ってる？」


Aのことだからいつもの動きやすい格好にスニーカーで来るだろう、なんて考えが良くなかったのだろうか。


ひらひらのスカートに大きめのニット、細くて長い足を強調するようなロングブーツ。

白い肌にはほんのりとメイクが施してあって、さらさらの髪にはゆるいウェーブがかかっていた。


可愛いなんて言葉じゃ、表せなくて。


「う、ん……似合ってる。」

「ふふ、どうしたの？英。付き合いたてみたい！」

口に手を当てて笑う君もいつも以上に可愛くて、思わずキスをしてしまったのは仕方のないことだろう。

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