【国見英】ねぇ、国見くん。【短編集】

天気 ページ4

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「………っ、ぅあ、」

何よ何よ何よ、別に元から好きなんかじゃなかったもん。遊びで一緒に居てあげただけだもん。私が捨てられた訳じゃないもん。


『他に好きな子が、出来たんだ』


そんな女より私の方がよっぽど可愛いわ。その子は貴方に、何をしてあげられるの？
部活が終わるまでずっと待っててあげられる？休日は家まで行って料理を作ってあげられる？


…私よりあなたへの気持ちは、大きいの？


降り続ける雨は、強さを増すばかり。

制服はびしょ濡れだった。
…お母さんに怒られちゃうなぁ。


こんなぐしゃぐしゃの顔で、帰れる訳がない。


まだ夏真っ盛りとは言え、こんな雨だと気温も下がるだろう。

「さっむ……」

泣きすぎて掠れた声でそう呟くと、その場にうずくまった。


このまま、死ねればいいのに。


「…、っう…」

だめだめ、泣いちゃだめ。
誰も慰めてなんてくれないよ。



…あれ？

肌に打ちつけられ続けていた水が、無くなった。

おかしいな、雨はまだ降ってるはず、

驚いて顔を上げると、見慣れない青い傘があった。


「……あの、」

「はいッ！？！？」

声も出せずにいると、話しかけられた。思わず自分でもよくわからない声が出る。


「こんなとこで座ってたら、風邪引きますよ」

無愛想に、告げられた一言。

「ぇ、あ…はい！ごめんなさい、すぐ帰ります！」

「いやあの……良ければ家まで、送りますけど。」


………え？

・

「…泣いてました？」

「へ！？ぃ、いや…あの、」

「良ければ話、聞きますけど」

普段の私だったら、初対面の人にこんな話きいて貰う訳がない…けど、


「…なんか、彼氏が、いきなり別れてって…好きな人が出来たからって…、意味わかんない、」

別れて、と言われた時の事を思い出して、また涙が溢れる。

「ごめんなさ、泣くつもりじゃ、なくて…」

「……すいません」

突如、暗くなる視界。

ふわっと香る柔軟剤の匂いと、雨なのに暖かい体。

抱き締められているの気付くのに、そう時間は掛からなかった。

「…ぇ、あの」

何故か離して、と言えずに固まっていると、突然離されて「……すいません、本当なんか、何してんだろ」と赤い顔で言われ、つられて自分の顔も赤くなっていくのを感じる。


「…よくわかんないけど、あんたに泣かれるのはなんか、嫌なんです」



いつの間にか止んでいた雨と、あなたの赤い顔。


恋が始まる、予感がした。



(明日はきっと、晴れでしょう)

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