【国見英】ねぇ、国見くん。【短編集】

ハートないちご ページ18

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「すっっぱ。
何これ、いちご？季節じゃないね」

「え、人が料理してるとこ勝手につまみ食いして文句……？？」



英を喜ばせようと思って、とぶりっ子してみると、俺を喜ばせたいならそこのコンビニでキャラメルでも買ってきたら？と一蹴される。



「うそ、わたしがいちごのタルト食べたかっただけ。季節じゃないくせにスーパーで安く売ってたから。だから英は食べなくて結構ですぅー。」

わざとらしくそっぽを向いて、かしゃかしゃとカスタードクリームを作る。タルト生地を焼くのなんて面倒で、市販のものだけれど。


美味しくできるといいな。出来上がったクリームをひとなめ、あまい。


それにしても、やけに後ろが静かだ。意地悪なな英のことだから、いたずらのひとつやふたつ、仕掛けてきてもおかしくないのに。


まあいいか。平和なのはいいことだよね。ふふん、と鼻歌を歌いながら水をきったいちごを盛り付ける。


！！


「みてみて、英、ハートのいち……」


「うわ、甘。A、クリーム舐めたでしょ」



ハートの形の苺を、見つけたんですよ。

その嬉しさを共有する暇くらい、与えてくれたっていいじゃない！！

奪われた唇に、わたしの頭は何も考えられなくなった。


「はは、真っ赤。いちごみたい」


くしゃっと顔を歪めて笑った表情と、再び近づいてくる顔に、指先のいちごを支える力もなくなった。

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